どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。
今回は私の大好きな森博嗣の著作を紹介しよう。今作も至言に溢れていて、脳みそに心地よい栄養を与えてくれる一冊である。
内容紹介
私たちは「一つに集中するのはすばらしい」という思い込みにとらわれている。
「だらだら」「非効率」を排除しようとする風潮の中、
累計1600万部超の人気作家が提唱する「アンチ集中力」のすすめとは?
人間のもつ本来の力を発揮するには?
誰もいわなかった情報過多時代の<知的生産術>。
これから結果を出したい社会人から、大学生まで。
全世代におすすめしたい、常識のとらわれない頭の使い方を1冊にまとめました。
昨今のビジネス書は、タイトルを過激にする傾向がある。
こちらの『集中力はいらない』も同じで、誠実さを売りにしている森博嗣がつけたとは到底思えない過激なタイトルである。きっと編集者が決めたのだろう。
中身を読めば分かるが「集中力はいらない」と断言するような内容ではない。
「もっとぼんやりと見ること(抽象的)で、思わぬ発想が生まれる」ということが書いてある。
森博嗣のこの主張は以前から著作で何度も書かれており、特に「人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか」は非常に似通った内容になっている。代わり映えしないと言えばそれまでの本である。
ただ、最近よく言われるような「一点集中」「生産性を上げるためには、必要最小限のことに全力を注ぐ」といった集中一辺倒になっている風潮に対して、カウンターを食らわせる意味では、いいタイミングで出された本だと思う。
みんな複雑さが嫌い
物事をはっきりさせたい人は多い。
私も職場で多数の部下を抱える身なので、よく「はっきりしてください!」と明確な答えを出すように催促されることが多々ある。勘違いしてほしくないのだが、決して私が優柔不断だからではない。
人は分かりやすい構図が好きだ。
アンパンマンに代表されるように「これが正解で、これが間違い」というふうに決まっている方が脳内で管理しやすいのだろう。
その一方で、あやふやな答えや抽象的な概念というのは、なんとも捉えどころがなく、取り扱うのが難しい。そんなことを周りの人に話しでも「もっと具体的に」と言われてしまうことだろう。
しかしながら、この世界で暮らすほとんどの人が理解しているように、この世は白黒つけられないことがほとんどだ。すべてはグラデーションである。ドレミの音階だって、途中の音があることをご存知か。
そんな、グラデーションで、把握しにくい世界だからこそ、人間は知恵を出して「白黒つけられる」方法を見出してきたのだろう。その方がコミュニケーションが捗る。複雑さを排除しようとするのは、生存本能が働いているせいなのかもしれない、というふうに適当なことを書いてみる。これもグラデーションですか?
集中は疲れる
これは誰もが認めるところだと思うが、集中というのはかなり疲れる。
疲れるとミスをする。ミスをすると生産性が落ちる。生産性が落ちるとカス扱いされる。カス扱いされるとプライドが傷つき命を断つことになるだろう。つまり集中すると自殺してしまうわけだ。というのは、冗談だとして。
集中というのは、短距離走である。短い時間だからこそ発揮できる力だ。爆発的なスピードを出すためには必要かもしれない。
だが基本的に人生は長距離マラソンである。短距離走の繰り返しよりも、適度なペースで長く走った方が、より遠くまで到達できる。疲れていたら走り続けられない。「じゃあ休憩したら?」と思われる方もいるかもしれないが、マラソンの途中で休憩する人なんて見たことがあるだろうか?
それにマラソンをしたことがある人なら分かるだろうが、適度なペースで走ると脳に余裕ができる。思考が散漫になり、「あれもこれも」と取り留めない考えを巡らせているうちに思いもよらないアイデアが浮かぶことがある。これは集中していたら、絶対にできない芸当である。
広範囲を見渡す力
細部にとらわれずに、全体をぼんやり眺める力というのは、人間特有のものだ。なんて書いてみたが私は動物になったことはないので想像である。
全体をぼんやり眺めることで、物事の根底に流れる本質や共通点に気づくことができる。そもそもこの“気づく”という人生において非常に重要な役割を果たす力は、集中しているような視野狭窄の人間には発揮できない。例えば、ネットでよく見かける誰かをひたすら攻撃しているような人というのは、嫌いな相手に集中しているせいで、醜い自分に気付けない。
そういった意味で考えると集中力というのは、「ものごとに囚われてしまう力」と言えるかもしれない。
だから周囲を見渡してみると、みんな集中力の塊みたいに見えてくる。
みんな色んなものに囚われて、集中している。何かに文句を言い続けている。外に目を向けたり、自分自身を客観的に見ればすぐに解決するのに、集中してしまっているがために、永遠に気付けない。死ぬまで気付けない。
些細なことや例外に囚われず、広い景色を眺める力は誰しもが持っている。ただ単に使わないだけである。
悲しいのは、使わないと選んでいることを本人が自覚していないことである。
何かに熱中するものいいし、幸せなことだと思う。
しかし、ちょっと目を上げてみれば、まだまだ他にも面白いことはたくさんあるだろう。
それに、遠くを眺めてから歩を進めるのは、目的地にたどり着くためには必要なことではないだろうか。
以上。
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