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【随時更新】森博嗣のオススメ作品を教える【読むのが追いつかない】

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読者が本を読むより早く刊行する稀有な作家。

 

小説量産マシーン森博嗣に挑戦

どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

 

今回は恐れ多くも森博嗣御大のオススメ作品を紹介したいと思う。

何が恐れ多いかって、そりゃもうあれですよ、あれ。圧倒的なまでの著作量ですよ。

もうね、私も長らく森博嗣のファンをやってきてるけど、全然追いつかない。全然読み切れない。いくらファンでも森博嗣ばっかり読んでるわけにもいかないし、それなのにお構いなしに新刊を続々刊行しちゃうしで、ファンとしては嬉しいんだか悲しいんだかな状況である。

なので、正直に書くが私は森博嗣作品をすべて読んでいるわけではない。

それでも相当数は読み込んでいるので、「これから森博嗣を読みたい!」とか、「森博嗣の他の面白い作品は?」と思っている方には有用な記事になるだろう。

 

森博嗣作品の現時点での読破数

参考までに載せておくが、現時点での私の森博嗣作品の読破状況はこんな感じ。

 

80冊。

 

森博嗣の著作が全部でどれくらいあるのかは、把握していないのだが、大体100ちょいぐらいだと思われる。記事のタイトルに「読むのが追いつかない」なんて書いてみたが、だんだん追いついてきた印象である。

なにせ、彼の仕事量は年々減っているし、「作家業はフェードアウトしていきたい」と公言しているぐらいだ。彼の著作を楽しめるのも、あと数年なのかもしれない。とっくに使い切れないぐらいのお金は稼いでいるだろうし。

 

森博嗣作品のオススメ作品を紹介!

この記事では、全部ではないものの彼の著作のほとんどを読破してきた私が、森博嗣のオススメ作品をご紹介したいと思う。

一応参考までにだが、私は森博嗣作品を読むときには、シリーズものをすべて読破してから次のシリーズに手を出すようにしている。なので未読のシリーズでない限りは、かなり信用できるラインナップになっている、と自己評価している。

 

ちなみに私が今回の記事を書くにあたっての評価基準は以下の通り。

 

①推理小説として優れている(驚きがある)

森博嗣はミステリィ作家なので、まずはここ。

トリックや仕掛け伏線など、何でも良いので、とにかく推理小説として驚きをもたらしてくれるものであること。

ただし、森博嗣は自分自身で語っている通り、トリックなどを事前に考えておくようなことはしないそうなので、この理由でオススメしている作品は相当数限られる。

 

②森博嗣特有のアフォリズムが楽しめる

森博嗣作品には特有のアフォリズムが散りばめられており、私としてはこれが最大の魅力だと思っている。

気付きを得る、という経験は普段なかなかできるものではないので、森博嗣がさらっと言葉にする世界の真実みたいなものは、非常に刺激的であり快感である。

 

③物語として面白い

小説家なのだから面白い物語を書いてなんぼなのだが、それでも彼の作品の中でも特に物語性が高いものをオススメしている。これも本人が語っていたことなのだが、作品のプロットも考えずに執筆しているそうなので、ドラマチックな展開を森博嗣作品に期待しても空振りするだけである。

しかし、それでも面白い物語を書いてしまうんだから困った人である。

 

 

以上3点を主な評価軸として作品を紹介する。

では行ってみよう。

 

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S&Mシリーズ

まずは森博嗣最大のヒットシリーズでありデビューシリーズのS&Mシリーズである。

このシリーズにはドラマ化された『すべてがFになる』も含まれており、ご存じの方も多いのではないだろうか。 

すべてがFになる

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。 

これを外すわけにはいかないでしょ。森博嗣の代名詞的作品…かな?理系ミスティという新しいジャンルを生み出した作品でもある。天才が出まくるという図式を生み出したのもこの作品が最初かも。

 

笑わない数学者 

偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。そこで開かれたパーティの席上、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。一夜あけて、再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見され…。犀川助教授と西之園萌絵の理系師弟コンビが館の謎と殺人事件の真相を探る。 

 

トリックがあれな作品だが、天才数学者として登場する天王寺翔蔵博士の魅力がとんでもないので選出。言葉のひとつひとつが雰囲気に満ちていて、S&Mシリーズの中でも特に好きな作品。

 

今はもうない 

避暑地にある別荘で、美人姉妹が隣り合わせた部屋で1人ずつ死体となって発見された。2つの部屋は、映写室と鑑賞室で、いずれも密室状態。遺体が発見されたときスクリーンには、まだ映画が……。おりしも嵐が襲い、電話さえ通じなくなる。S&Mシリーズナンバーワンに挙げる声も多い清冽な森ミステリィ。

 

これは間違いない。色んな意味で。

凝ったタイトルが多いS&Mシリーズの中でも異色を放つタイトルには、素敵な意味があるのでそれも込みで楽しんでもらいたい。

でも初めてのS&Mシリーズ作品として読むのは絶対にオススメしないので、ご注意いただきたい。

 

Vシリーズ

続いては、ぐーたら科学者 瀬在丸紅子(せざいまるべにこ)によるVシリーズである。

S&Mシリーズと比べると知名度も人気度も低いシリースだが、色々と凝った演出があるのでファンの私としては非常に好きなシリーズである。

また、瀬在丸紅子の大人な恋愛模様は『エヴァンゲリオン』の葛城ミサトと加持リョウジを思わせ、森作品としては珍しく(?)人間ドラマを楽しめたりする。

 

黒猫の三角

一年に一度決まったルールの元で起こる殺人。今年のターゲットなのか、六月六日、四十四歳になる小田原静江に脅迫めいた手紙が届いた。探偵・保呂草は依頼を受け「阿漕荘」に住む面々と桜鳴六画邸を監視するが、衆人環視の密室で静江は殺されてしまう。

 

新シリーズの一発目ということもあり、森博嗣も意気込んで臨んだのだろう。突飛なキャラクターと思いの外にも本格なミステリィ。そして周到に用意された“あれ”。

森博嗣作品にしては珍しく、やられてしまった作品である。

 

この一風変わった装丁は、デザイナーの鈴木成一氏とケンカ寸前になるぐらい意見を戦わせた結果らしい。

 

恋恋蓮歩の演習 

世界一周中の豪華客船ヒミコ号に持ち込まれた天才画家・関根朔太の自画像を巡る陰謀。仕事のためその客船に乗り込んだ保呂草と紫子、無賃乗船した紅子と練無は、完全密室たる航海中の船内で男性客の奇妙な消失事件に遭遇する。 

 

Vシリーズはとにかく作品間の絡みが多く、単品でオススメするのが非常に難しい。なので、正直言うと全部最初っから読んでくれ、と言いたい。でもそれだとこの記事の意味が無くなってしまうので、泣く泣く作品を厳選している。

しかし、それでもこの『恋恋蓮歩の演習』はまず外せないだろう。

ガツンと来まっせ。

 

ちなみにだが、タイトルの意味は未だに分かっていない。

 

スカイ・クロラシリーズ 

押井守監督によって映画化もされたシリーズ。映画の方を私は観ていないが、かなり高評価だったそうだ。まあそれもそのはずで、この原作があればいい映画もそりゃできますよって話なのだ。

永遠に大人になることがない子供たちが、飛行機に乗り、殺し合うという凄惨な設定にも関わらず、読んでいるときに感じるのは圧倒的なまでの“美しさ”である

文章に酔う、というかなり貴重な体験ができるシリーズである。 

 

スカイ・クロラ 

戦闘機乗りの僕には、戦闘が日常。直接ではないけれど、人を殺す。人を撃ったその手でその日、ハンバーガを食べ、ボウリングもするのも日常……森博嗣が新天地に挑んだ意欲作! 

 

もうね…この美しすぎる装丁だけでも読む価値があるってもの。デザインを担当した鈴木成一デザイン室は本当に偉い。

表紙に載っている詩も大好きで、これが毎回楽しみだった。

ミステリィ要素はまったくないのでそこは勘違いしないように。あと飛行機の専門用語がポンポン出て来るので、訳が分からなくなることもあるだろう。

でもそれを差し引いても十分に名作と言えるだけの作品である。

 

ナ・バ・テア

空の底で生き、戦う人間たち。空でしか笑えない「僕」は、飛ぶために生まれてきた子供なんだ――「僕」と「彼」、そして「彼女」の物語。森博嗣の新境地、待望のシリーズ第2作! 

 

まず“None But Air”を『ナ・バ・テア』って表記しちゃうセンスが良い。英語を日本語で表記する際にかなり正確な音になるように森博嗣が気を使った結果である。

『ナ・バ・テア』は森博嗣自身が「最高傑作」と一時期語っており、作品としての完成度は相当高い。読んでいる最中もこの世界の中にどっぷり浸かりこむことができた。

至福の時間である。

 

 

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喜嶋先生の静かな世界

文字を読むことが不得意で、勉強が大嫌いだった僕。大学4年のとき卒論のために配属された喜嶋研究室での出会いが、僕のその後の人生を大きく変えていく。寝食を忘れるほど没頭した研究、初めての恋、珠玉の喜嶋語録の数々。学問の深遠さと研究の純粋さを描いて、読む者に深く静かな感動を呼ぶ自伝的小説。 

 

この静謐な物語の魅力を伝えるのは、かなり難しい。例えるなら、部屋でひとり静かに読書に没頭しているときの幸福感を文章にしたような作品である。あの幸福感は、快哉を叫ぶような騒がしいものではなく、自分の内が満たされるような感情である。

考えること、求めることの美しさや面白さを、丁寧な文章で綴っている。

ミステリーではないし、派手な展開は何一つないんだけど、ずっと面白くて、ずっと読めてしまう不思議な作品である。

 

女王の百年密室

旅の途中で道に迷ったサエバ・ミチルとウォーカロンのロイディは、高い城壁に囲まれた街に辿りつく。高貴な美しさを持つ女王、デボウ・スホの統治の下、百年の間、完全に閉ざされていたその街で殺人が起きる。時は2113年、謎と秘密に満ちた壮大な密室を舞台に生と死の本質に迫る、伝説の百年シリーズ第一作。

 

ミステリィとしては正直大した作品ではないと思うが、近未来SFとしての面白さと、森博嗣による死生観、宗教論が存分に語られているのが面白い。

そして何よりも驚いたのが、ミステリィ小説の存在そのものを否定するかのような展開である。あまり書くとネタバレになるので具体的な内容には触れないが、とにかく「そんなのあり?」と言いたくなるようなストーリー展開が待っている。

それにしても全自動ロボットのネーミングに脱帽。“ウォーカロン”って、ぴったりすぎませんか。

 

そして二人だけになった 

全長4000メートルの海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊。その内部に造られた「バルブ」と呼ばれる閉鎖空間に科学者、医師、建築家など6名が集まった。プログラムの異常により、海水に囲まれて完全な密室と化した「バルブ」内で、次々と起こる殺人。残された盲目の天才科学者と彼のアシスタントの運命は……。反転する世界、衝撃の結末。知的企みに満ちた森ワールド、ここに顕現。 

 

これは面白い試み。

極度の推理小説ファンとしてはこれくらいひねくれた作品じゃないと楽しめない。 

Amazonのレビューを見るとかなり評価が分かれているようだが、こういった野心的な作品こそがミステリィの可能性を広げるのだ。

私は森博嗣にこんな作品をもっと書いてほしいと思っている。他の作品はキャラ小説に傾倒しすぎである。

 

ヴォイド・シェイパシリーズ

全然タイトルの意味が分からない『ヴォイド・シェイパシリーズ』である。

実はこのシリーズが森博嗣の最高傑作である。私が勝手に決めただけだが。

ミステリィ要素は一切なく、森博嗣初の剣豪小説となっている。

雰囲気としては『スカイ・クロラシリーズ』と似た所がある。美しい文章で読者を酔わせる手法をふんだんに使用し、最高の読書体験を提供してくれる。あの言語センスは凄えよ。

 

一応、1作ごとに完結はしているものの、シリーズを通して大きな物語になっているし、尻上がり的に面白くなっていくので、『ヴォイド・シェイパシリーズ』に関しては、全部読むべきである。

間違いないのでぜひ読んでいただきたい。

 

ヴォイド・シェイパ 

人は無だ。なにもかもない。ないものばかりが、自分を取り囲む―ある静かな朝、師から譲り受けた一振りの刀を背に、彼は山を下りた。世間を知らず、過去を持たぬ若き侍・ゼンは、問いかけ、思索し、そして剣を抜く。「強くなりたい」…ただそれだけのために。壮大な物語の序章となる一作目。

 

作品の雰囲気はシリーズを通してまったくブレないので、この『ヴォイド・シェイパ』を楽しめるのであれば問題ないだろう。

ファンとしては、森博嗣が剣の戦いをどうやって描くのかも興味津々であった。 

 

ブラッド・スクーパ 

生も死もない。己も敵もない―「都」を目指す途上、立ち寄った村で護衛を乞われたゼン。庄屋の屋敷に伝わる「秘宝」を盗賊から守ってほしいのだという。気乗りせず、一度は断る彼だったが…。この上なく純粋な剣士が刀を抜くとき、その先にあるものは? 

 

シリーズが一気に盛り上がりを見せる第二作目。

こちらの『ブラッド・スクーパ』を読んで私は「もう最後まで読むしかない」と確信した。

この物語がどこへ向かうのか、そして森博嗣が提示する“強さ”の答えが知りたかったからだ。 

 

スカル・ブレーカ 

都へ向かう途中、侍同士の真剣勝負に出くわしたゼン。誤解から城に連行された彼を待っていたのは、思いがけぬ「運命」だった。若き侍は師、そして自らの過去に迫る。急展開の第三巻。

 

剣豪小説にも関わらずなかなか戦ってくれない主人公のゼンがにくい。もったいぶるわけではないが、簡単に剣を振るわないことが彼の美学であり、それが物語の面白さにも繋がっているのだろう。

美しさと強さがリンクしているところが森博嗣らしいと言える。 

 

フォグ・ハイダ 

山の中で盗賊に襲われたゼンは、用心棒らしき侍と剣を交える。強い。おそらく、勝てない―歴然たる力の差を感じながらも辛うじてその場を凌いだゼン。彼を戦慄させた凄腕の剣士には、やむにやまれぬ事情があった。「守るべきもの」は足枷か、それとも…。

 

シリーズも終盤に差し掛かり、伏線などの回収が進んでくる。新たな展開も含みつつ、強さの正体にさらに一歩踏み込んだ作品である。

戦いの中で難解な問いを繰り返す『ヴォイド・シェイパシリーズ』だが、特有の優しさを作品の中で感じさせることが多い。

これは、考えることで生まれる矛盾への包容力だと私は思っている。

 

マインド・クァンチャ 

その美しい速さ、比類なき鋭さ。こんな剣がこの世にあったのか―。突如現れた謎の刺客。ゼンは己の最期さえ覚悟しつつ、最強の敵と相対する。至高の剣を求め続けた若き侍が、旅の末に見出した景色とは?
 
残念でならない『ヴォイド・シェイパシリーズ』の最終巻である。そして最後に相応しい爽やかなラストである。
 
あまり他の作家と比べるようなことはしたくないのだが、剣豪ものと言えばやはり『バガボンド』を私は思い浮かべてしまう。
『バガボンド』も『ヴォイド・シェイパシリーズ』と同じテーマを持っている。つまり「強さとは?」である。
 
この記事を書いている現時点でまだ『バガボンド』ではその答えに至っていないが、森博嗣はこちらの『マインド・クァンチャ』をもって“強さ”の答えを提示してくれている。その高みを見せてくれている。
そういった意味でも非常に読む価値のある作品である。
 
本当に私の大好きなシリーズである。ご馳走様でした。
 

短編集 

書く前にプロットをほとんど考えないと豪語する森博嗣だが、さすがに短編ではそうもいかないだろう。限られたページ数の中で物語を展開するにはそれ相応の準備が必要になる。

ということで、実は長編作品よりも完成度が高い傾向にある森博嗣の短編集。結構当たりが多かったりする。

 

僕は秋子に借りがある 森博嗣自選短編集

初めて秋子に会ったのは、大学生協の食堂だった。ちょっと壊れている彼女と授業をサボって出かけ、死んだ兄貴の話を聞かされた。彼女が僕にどうしても伝えたかった思いとは? 胸が詰まるラストの表題作ほか、「小鳥の恩返し」「卒業文集」など、文学的な香りが立ちのぼる、緻密で美しい13の傑作短編集。 

短編集には当たりが多いと書いたばかりだが、正直な話こちらの『僕は秋子に借りがある』を読んでおけばほとんど事足りる。なにせ森博嗣自身が選んだベスト版である。面白くないはずがなく、切れ味の抜群のミステリィもあれば、美しく切ない物語まで、幅広く楽しめる。

むしろ他の短編集はこちらの『秋子』を気に入ったら読んでもらえばいいと思う。

 

地球儀のスライス

「黒窓の会」。西之園萌絵を囲んで開かれるその秘密の勉強会にゲストとして招かれた犀川創平は、古い写真にまつわるミステリィを披露した。屋根飾りと本体が別々になった奇妙な石塔は、何のために作られたのだろうか。S&Mシリーズ二編を含む、趣向を凝らした十作を収録。『まどろみ消去』に続く第二短篇集。 

『秋子』だけ読んでおけばいい。と言ったそばから他の作品を紹介しているのには個人的に強烈な意味がある。

短編集としては平均的な出来(褒め言葉)なので、そこまで強烈にオススメする必要はない。しかしながら、実はこの『地球儀のスライス』、解説をあの『HUNTER✕HUNTER』の作者である冨樫義博が務めているのだ。

私は『HUNTER✕HUNTER』が大好きだ。地球で一番好きなマンガだ。そしてこんな記事を書いているぐらいだから森博嗣も大好きである。そんな大好きな二人が登場する作品を紹介せずにはいられないだろう。

それにもちろんさすが冨樫義博である。ただの解説には甘んじていない。おべんちゃらを適当に並べたような解説文ではなく、イラスト(だいぶ適当だけど、めっちゃ興味深い)付きで、森博嗣作品についての分析を行なっている。これを読んで「冨樫ってのは根っからの分析屋なんだな」と認識を改めた次第である。

無駄に紹介文が長くなってしまったが、それもこれも、この大好きな作品が埋もれてしまうのがあまりにも惜しいと思ったからである。少々熱くなってしまったのは勘弁していただきたい。

 

ちなみに、もし森博嗣の短編集を気に入ってもらったとしても、これから新しい森博嗣の短編集が発表されることはない。

なぜなら売れないから。

森博嗣は完全にバイトとして作家業を行なっているので、売れないものは書かないというスタンスなのだ。

森博嗣本人は短編集の方が好きだし、私も大好きなのだが、それでも売れないものは仕方ない…。残念である。

 

 

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エッセィ

近年の森博嗣は引退宣言をしてから(精確には宣言などしていない)は、フィクション以外の作品が目立つようになってきた。

そんな中でも特にシリーズになっているエッセィは相当に極上。いや、特上。私の大好きな森博嗣成分が濃度200%ぐらいで詰まっている

最初に書いた通り、この記事では森博嗣のアフォリズムに優れた作品も紹介しているのだが、エッセィ以上に彼のアフォリズムを楽しめるものはない。

で、非常に申し訳ないのだが、こちらもすべて面白いので全作品がオススメである。クオリティがまったく変わらないのでどれかひとつだけ取り上げることが本当にできないのだ。

100の講義シリーズ

だいわ文庫より発表されている『100の講義シリーズ』は、森博嗣が100個のテーマを出し、それについて2ページ分語る、という手法を取ったエッセィになる。

これがまた快刀乱麻。目からうろこの連続。森博嗣の頭の柔らかさ、博学っぷり、俯瞰能力の高さ、そして変人っぷりを最大限に楽しめる。

次で紹介する『つぶやきシリーズ』もそうだが、定期的に読み返すと新たな発見や気づきを与えてくれる稀有な作品である。これまでさんざん色んなエッセィを読んできた私だが、ここまで濃厚なエッセィは知らない。

 

 

 

 

 

 

さらにはさらに、

完結してしまった『100の講義シリーズ』の続編的な扱いになっているのが、こちらの『MORI Magazine』である。

 

エッセイもたくさん収録されているし、キレッキレの質疑応答、極めつけは森博嗣たちによる座談会まで…!

これはもうむしろファンブックと呼んでいいシロモノである。つまり私のような森博嗣ファンには堪らん作品だった。 

 

※ちなみに続編の『MORI Magazine2』は全然ダメ。

確実にネタが劣化していて、なんなら森博嗣本人が本文中で「これはボツでは?」とか「全然おもしろくないですね」と書いているぐらい。

褒められるのはイラストぐらい。

 

つぶやきシリーズ 

前述した『100の講義シリーズ』とほとんど同じ形式で書かれたエッセィである。何が違うかといえば、こちらは本当に森博嗣が日々の中でタイトルを思いついた順に記載されていることだ。

だから何か効果的な違いがあるとかと言えば、まったくそんなことはなく、とにかく「森博嗣成分が濃い」ということに尽きる。最高である。個人的に森博嗣作品の中で一番新刊を楽しみにしているシリーズだ。できることなら毎月発刊してほしいぐらい。

 

『100の講義シリーズ』はどうやら『正直に語る~』で一旦終了になるそうなので、今後はこちらの『つぶやきシリーズ』を待つしかない状態である。

 

ちなみに作品タイトルに意味はまったくないので考えても無駄である。

 

 

 

 

 

 

ちなみにこの次の『つぶさにミルフィーユ』は、執筆の手法を変えている。

これまでは日々の中で思いついたことを半年かけて溜めておき、あとで一気に書き上げていたのだが、『つぶさにミルフィーユ』では、100ヶの内容を考えながら書いている。

それのせいなのか、単なるマンネリなのか分からないが、同じようなテーマで連続して書いていること多かった。

ただ、「不思議な人は春に多い」という話の所で、過去にあったファンの迷惑行為は笑ってしまうぐらい凄まじかったし、それに対する森博嗣の態度も笑ってしまうぐらいドライだったので、大満足。

あと『つぶさにミルフィーユ』のあとがきは吉本ばなな氏なのだが、このあとがきも秀逸だった。しかもあとがきが“つづく”という前代未聞の展開である。 

 

 

 

吉本ばなな氏のあとがきが「つづく」から「連載第2回」になっていた。こうなると、一体誰の本なのかわけが分からない。 

 

ビジネス書 

一体ビジネス書とは何なのだろうか。

フィクション以外の作品のことをそう呼ぶときもあるが、それはそれでノンフィクションなんていう言葉もあり、とにかくよく分からない。適当なジャンルが存在しない本のことをビジネス本と呼ぶのかもしれない。多くの本はビジネスのために存在するからだ。

という関係のないような話をしたのにも理由があって、森博嗣が書くフィクション以外の作品も内容が多岐に渡り、なかなか一括りにはできないのだ。

よって、結局は『ビジネス書』とジャンル分けするのが今のところ一番精確である。 

 

臨機応答・変問自在 

ミステリィ作家であり、某国立大学工学部助教授である著者は、学生に質問をされることで出席をとり、その質問に自身が答えたプリントを配布するという授業を、何年間も続けている。理解度を評価するとともに、自主性や創造性などを高めるためである。授業内容に関連するもの以外に、たわいないものから、科学、雑学、人生相談など、学生の質問内容はヴァラエティ豊かだ。本書は、数万にのぼるそのQ&Aから、ユニークなもの・印象深いものを独断的に選び、その面白さの一端を紹介していく。

森博嗣が大学助教授を勤めていたときも課題として行なっていた、学生との質問のやりとりをまとめたもの。

これがまあ面白い。

あの手この手で森博嗣に議論を吹っかけてくる学生に対して、時に鋭く、時に軽やかに切り返す森博嗣の解答が気持ちよくて仕方ない。

これだけ頭が良ければ、人生楽しいだろうなぁ、なんてことを凡人である私は思ってしまったりする。そんな凡庸な発想自体が凡人である証である。お恥ずかしい限りだ。

 

ちなみに続編は理系大学生ではなく、質問を一般から応募したもの。森博嗣曰く「安易な企画」。でもやっぱり面白い。

人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか 

熟考したつもりでも、私たちは思い込みや常識など具体的な事柄に囚われている。
問題に直面した際、本当に必要なのは「抽象的思考」なのに――。

「疑問を閃きに変えるには」「“知る"という危険」「決めつけない賢さ」「自分自身の育て方」等々、
累計1300万部を超える人気作家が「考えるヒント」を大公開。

なかなか壮大なタイトルである。

中身は、分かりやすさばかりを追い求める私たちへの警鐘のような内容になっている。珍しく真面目に森博嗣が“大事なこと”について語っており、非常に考えさせられる言葉に溢れている。今までの自分の考え方や、思ってきたことを否定したくなることだろう。

 

森博嗣がなぜあんなにも優秀なのか。柔軟な発想が可能なのか。

その理由がここにある。

 

ちなみにこちらの本は武田鉄矢による解説がYOUTUBEにあるので、そちらを参考にされてもいいかもしれない。

武田鉄矢 今朝の三枚おろし『人間はいろいろな問題について・・・』2週間まとめ - YouTube

 

作家の収支 

著者は19年間で15億円!

作家は、どれだけ儲かるか?

誰も書かなかった小説家の収入の秘密と謎を、余すところなく開陳した前代未聞の1冊。

・あなたは小説家の文章がいくらで売れる知っているか?
・僕は1時間で6000文字(原稿用紙約20枚分)を出力する。
・傑作も駄作もエッセィも原稿料はあまり変わらない。
・人気作家の人気とは「質」ではなく、あくまで読者の「量」のこと。

正直すぎて笑えるぐらい自らの収支について赤裸々に書いた本。作家を目指している人からすれば夢のある内容かも。

人は他人のお金の話が大好きなのだが、なかなかここまであけすけに公開している成功者はいないので、そういった意味でも貴重な本である。

文章を書く人の中には「一文字いくら」という価値単位があるのだが、本書の中でも森博嗣がそれを公開していて、彼の場合大体「一文字100円ぐらい」だそうだ。 

 

私もブログで文字を書いて収入を得ているが、「一文字0.6円ぐらい」である。ゴミのような数字である。悲しい。

 

「やりがいのある仕事」という幻想

 

人々は、仕事に人生の比重を置きすぎた。もっと自由に、もっと楽しく、もっと自分の思うように生きてみてもいいのではないだろうか。成功するとはどういうことか?良い人生とは?

すり切れた心に刺さる画期的仕事論。人生を抜群に楽しむための“ちょっとした”アドバイス。

 

森博嗣の新書で一番長く、そして冊数でも売れているのが本書である。

強烈なタイトルを見れば内容は大体想像できるんじゃないだろうか。昨今の仕事にやりがいを求める風潮を、切れ味鋭くぶった切る1冊である。実際、森博嗣は小説の仕事にやりがいなんぞ1ミリも感じていないが、それでも年収が億を超えている。やりがいよりも大事なことがある証拠じゃないだろうか。

また、本書では森博嗣が珍しく人生相談のようなことをしている。読者から募った深刻な悩みに対して、森博嗣の明晰な頭脳から恐ろしく明快な解答が提示される。これがまた最高である。まるで巨人の肩に乗って世界を見下ろすかのような快感がある。いやー、頭がいいって羨ましいですなぁ!

働くことに悩んでいる人はぜひご一読いただきたい。視界が鮮やかに開けるはずだ。

 

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おまけ 

以上が『森博嗣のオススメ作品』になる。あくまでも現段階の話である。

さて、ここで記事を終わりにしようと思ったのだが、もう1冊面白い本があったのを思い出したのでついでに紹介したい。精確には森博嗣の著作ではないのだがいいだろう。

 

文系教授(哲学)・土屋賢二と理系助教授(建築学)・森博嗣。発想も思考も思想も性質もまったく異なる2人が、6回にわたって行ったトークセッション。小説の書き方から大学の不思議、趣味の定義、友人は必要なのかという根源的な問いまでを軽妙かつ神妙に語りつくす。読むと学びたくなる絶妙「文理」対談! 

私が大好きな作家(?)土屋賢二との対談集になる。どちらも相当な変人だとは思っていたが、森博嗣の変人さがあまりにも突き抜けているばかりに土屋賢二がツッコミ役に回ってしまっているのが残念である。これだとほとんど対談の意味がない。

なのだが、実はこちらの作品、最後におまけの短編が付いていて、これがなかなかに良い。ネタバレになるのでこれ以上は控えておこう。とにかく良い。気になる方はぜひ手にとってもらいたい。正直、森博嗣の短編の中で一番好きかもしれない。

あと、土屋賢二も無理矢理ミステリィ短編を書かされているのだが、こちらは酷いもんである。会話文は相変わらず天才的に面白いのだが、ミステリィとしては死んだような作品である。まあその会話文の要素が土屋賢二の良さなので、それさえあれば十分と言えよう。

 

 

さあ、本当にこれでこの記事は終わりである。

これからも森博嗣作品はコンプリートしていくので、面白い作品があれば順次追加で紹介していきたいと思う。

 

以上。長々とお付き合いいただき感謝。

 

 

蛇足。

森博嗣のエッセィが好きであれば、彼が無料で(こっそり)公開しているブログもオススメである。

blog.fuyushoten.com

 

 

読書中毒ブロガーひろたつが、生涯をかけて集めた超面白い小説たちはこちら。⇒【2019年版】小説中毒が厳選した最高に面白い小説98選