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本屋大賞にランクインしてないけど問答無用で超面白い作品まとめ

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※2018年5月21日更新

 

どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

毎年行われている本好きのための祭典“本屋大賞”というものがある。

全国の書店員という素人によって「その年一番面白かった本を決める」という単純極まりない賞である。面白い本を探す上でこんなに分かりやすい賞は他にない、と断言できる。

しかしながら、そんなに優秀な本屋大賞だがひとつ欠点がある

それは「年間でたったの10冊しか選ばれない」ということだ。

年間でどれだけの小説が発表されているのか詳しい数字は知らないが、たぶん3000~5000冊はあると想像する。素人のKindle本なんかと入れたら1万ぐらい行くんじゃないだろうか。

その中からたったの10冊である。これでは本当に面白い本は掴みきれない。

しかも書店員が好き勝手に選んだ本たちなので、どうしても人気作家の作品に偏ったりするし、直木賞・芥川賞を受賞した作品なんかがランクインしたりしてしまう。人気作家の作品が面白いのなんて周知の事実だし、他の賞と作品が被ってしまうのは、ひとつの賞レースとして意味をなしていないと私は思う。

 

ということで、今回の記事では読書中毒ブロガーである私が、「本屋大賞にランクインしてないけど超面白い小説」を紹介したいと思う。

 

もちろん作品を見つけ次第どんどん追加していくので、楽しみにしてもらいたい。必死に探してきまっせ。

 

では珠玉の作品たちをご覧頂こうじゃないか。

 

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私の頭が正常であったなら 

 

私の哀しみはどこへゆけばいいのだろう――切なさの名手が紡ぐ喪失の物語。

突然幽霊が見えるようになり日常を失った夫婦。首を失いながらも生き続ける奇妙な鶏。記憶を失くすことで未来予知をするカップル。書きたいものを失くしてしまった小説家。娘に対する愛情を失った母親。家族との思い出を失うことを恐れる男。元夫によって目の前で愛娘を亡くした女。そして、事故で自らの命を失ってしまった少女。わたしたちの人生は、常に何かを失い、その哀しみをかかえたまま続いていく。暗闇のなかにそっと灯りがともるような、おそろしくもうつくしい八つの“喪失”の物語。

 

 本屋大賞でホラー作品を見ないのは何故なのか。こんなに素晴らしい作品があるのに放っておくなんて…と思ったのだが、落ち着いて考えてみれば2018年刊の作品なのでまだエントリーしていなかった。しかし過去の傾向を見るに、きっと『私の頭が正常であったなら』はランクインすることはないと予想するので、紹介しておこう。

知る人ぞ知る天才作家乙一の別名義である山白朝子の傑作短編集である。

基本的なジャンルはホラーに分類されると思う。しかしこの作品の味わいはただの“怖い”だけでは収まらない。「暖かさ」「悲しみ」「切なさ」「驚き」そして「美しさ」。

あらゆる感情がこの作品を読む者の胸に去来するが、特に“美しさ”は他に類を見ないものだと思う。

 

山白朝子をまだ未体験の人は、一度ぜひ。

他の作家にはない独特の感覚を楽しめるから。

この美しい装丁だけでも傑作の匂いがしますなぁ。

 

オリンピックの身代金

 

 

 

小生、東京オリンピックのカイサイをボウガイします――兄の死を契機に、社会の底辺というべき過酷な労働現場を知った東大生・島崎国男。彼にとって、五輪開催に沸く東京は、富と繁栄を独占する諸悪の根源でしかなかった。爆破テロをほのめかし、国家に挑んだ青年の行き着く先は?  

 

作者の奥田英朗は本当に優秀な作家だ。こんなにのめり込める長編作品はそうそうない。上下巻と非常に長い作品なのだが、読んでいる最中、「あとこれしかないのか…」と何度ため息をついたことか。面白すぎて読み終わりたくなかった。 

日本が斜陽を迎えている2020年東京オリンピックではなく、高度経済成長期を迎えていたときの1964年東京オリンピックをテーマに据えた作品である。

高度経済成長の熱量を作品の中にこれでもかと詰め込んであって、とにかく熱い・暑い・アツい!

作中の季節も夏だし、こんなに汗だくになる小説は他にないだろう。読んだら確実に痩せる。

 

主人公の島崎と一緒にオリンピックをボウガイしようじゃないか。こんな貴重な経験はめったにできないはずだ。

 

 

マリアビートル

 

 

幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた、腕利き二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する――。小説は、ついにここまでやってきた。映画やマンガ、あらゆるジャンルのエンターテイメントを追い抜く、娯楽小説の到達点! 

 

もう本屋大賞の常連も常連。 ほとんどレギュラーになっている伊坂幸太郎である。

伊坂作品が面白いのはもうすでに日本中が知る所であり、これ以上人気になりようがない。なのでこれ以上伊坂作品をオススメする必要もない。

だが、だ。

それでも彼の最高傑作が本屋大賞にランクインしていないとなれば話は別である。

この作品を本屋大賞に入れず、何を入れるのか。伊坂が作風に迷って、ウロウロしてしまっている『ゴールデンスランバー』とかに大賞を与えている場合ではないのだ。

大賞を受賞した『ゴールデンスランバー』の面白さを100としたら、『マリアビートル』の面白さは1000だ。完全に私の勝手な主観である。だが間違いないと断言しておこう。信じろ。絶対に面白いから。

 

最悪の悪役に先の読めない展開、撒き散らされたユーモア、最高の構成力…。

小説にこれ以上の面白さを求めることは不可能だと思う。

 

 

孤狼の血

 

昭和63年、広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上とコンビを組むことに。飢えた狼のごとく強引に違法捜査を繰り返す大上に戸惑いながらも、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。やがて金融会社社員失踪事件を皮切りに、暴力団同士の抗争が勃発。衝突を食い止めるため、大上が思いも寄らない大胆な秘策を打ち出すが…。正義とは何か。血湧き肉躍る、男たちの闘いがはじまる。 

 

2017年本屋大賞でやっとその強烈な才能が認められた柚月裕子。『盤上の向日葵』もなかなかの作品だったが、個人的には前作の『孤狼の血』をよりオススメしたい。

不良刑事とヤクザが織りなすドッロドロのドラマは、とにかく濃厚!とても女性が書いたとは思えないぐらい下品だし、口汚く繰り出される広島弁も迫力が凄い。完全に『仁義なき…』の世界観である…と思ってたら、本人のインタビューに「『仁義なき戦い』が好き」と書いてあった。でしょうね。

作風に性別なんか関係ないが、それでもあんな美人さんがこんな最高に汚らしい作品(褒め言葉)を書いていると思うと、なんだか不思議な気持ちになってしまう…。

 

 

恋文の技術

 

 

京都の大学院から、遠く離れた実験所に飛ばされた男が一人。無聊を慰めるべく、文通修業と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。文中で友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れるが、本当に想いを届けたい相手への手紙は、いつまでも書けずにいるのだった。 

 

こちらも本屋大賞の常連になりつつある森見登美彦である。もちろん文句なしに面白い小説を書く作家ではあるが、やはりタイミングというべきか、本屋大賞に選ばれるべき作品が選ばれていないと正直思う。

で、納得がいかないのが『聖なる怠け者の冒険』である。あんなダラけた作品は本屋大賞には相応しくない。プロットがいまいち決まっていないまま書き出したのが丸わかりな作品だった。笑いの密度も低いし、一体モリミーはどうしちまったんだ…と関係ない悪口はここまでにしておくとして『恋文の技術』である。

我らが森見登美彦は、非モテ男子を代表するような非モテ作家である。彼の筆から生み出される輝かしいまでの非モテ男子たちは、ときに笑いを生み出し、ときに共感を生み出す。そして非モテだからこそ生まれる、どうしようもないドラマがそこにはあるのだ。

そんな非モテ男子によるどうしようもないドラマが余す所なく描いているのが『恋文の技術』である。本当にどうしようもなさすぎて笑ってしまうが、これこそが森見登美彦の真骨頂だろう。

 

 

検察側の罪人

 

 

蒲田の老夫婦刺殺事件の容疑者の中に時効事件の重要参考人・松倉の名前を見つけた最上検事は、今度こそ法の裁きを受けさせるべく松倉を追い込んでいく。最上に心酔する若手検事の沖野は厳しい尋問で松倉を締め上げるが、最上の強引なやり方に疑問を抱くようになる。正義のあり方を根本から問う雫井ミステリー最高傑作!

 

これほどまでに強烈に我々の価値観を真正面から破壊してくる作品はないだろう。 

雫井脩介の魂が込められたこの作品を読めば、読者の胸には大きな疑問が生まれるはずだ。それは「正義とは何か?」である。

正直言って、綺麗な解答が得られるような安易な物語ではない。読んでスッキリするようなエンタメ作品でもない。

しかし、この作品でしか味わえない濃厚な体験がある。絶対に読むべきだ。

以前とある高名な作家が「長編を書くのは、それだけのページ数が必要だから」とおっしゃっていた。ダラダラと駄文を連ねるのではなく、脳みそを振り絞り、知恵を出し尽くした結果、作家自身が表現したいものを凝縮したものが長編作品なのだ。

そしてまさに「長編にするべき作品」が『検察側の罪人』なのである。

 

いやー、本当にこんな素晴らしい作品が本屋大賞にランクインしていないのは不思議でならない。

もしかしたら、『検察側の罪人』のような重めの作品は避けられる傾向があるのかもしれない。過去のランクインした作品をパッと見てみても、読後感が良いものばかりだし…。

 

 

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装丁は残念な感じだけど…。

 

永遠の0

 

 

「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、1つの謎が浮かんでくるーー。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。

 

百田尚樹は本屋大賞のイメージが強かったので、あれだけバカ売れした『永遠のゼロ』がまさかランクインしていないとは意外や意外。

まあ今更紹介するまでもないかもしれないが、一応。個人的には百田尚樹の最高傑作だと思っている。

 

実は「亡き祖父の真実を追う」というストーリーはどうでもよかったりする。確かにそれを軸に物語は進んでいくのだが、この作品の醍醐味はそんなことよりも、特攻隊という戦争の悲劇に振り回された若者たちの個々のドラマにある。

もうね、これが感涙必至。確実に泣く。ボロボロ泣く。ドロドロになる。

史実がどうたらとか、ストーリーが稚拙だとか、人物描写が薄いとか、色々言われているけど、そういう楽しみ方をする作品ではないのだ。もっと素直にひとつひとつのドラマに寄り添えば、それだけでよろしい。

まあ、これだけたくさんの評価が(高評価も低評価も)付いていること自体が、この作品が持っている力を証明しているじゃないだろうか。 

 

 

天使のナイフ

 

 

天罰か?誰かが仕組んだ罠なのか?妻を惨殺した少年たちが次々と死んでいく! 生後5ヵ月の娘の目の前で妻は殺された。だが、犯行に及んだ3人は、13歳の少年だったため、罪に問われることはなかった。4年後、犯人の1人が殺され、桧山貴志は疑惑の人となる。「殺してやりたかった。でも俺は殺していない」。裁かれなかった真実と必死に向き合う男を描いた、第51回江戸川乱歩賞受賞作。 

 

薬丸岳はこんなに優秀な作家なのに全然本屋大賞に引っかからない。なぜなのか?きっとさっきの『検察側の罪人』と同様、あまりに作品が“重すぎる”からなのだろう。彼の作品は軽々しく「超面白い!」なんて言えないぐらい、我々が暮らす世界と肉薄した物語を展開してくる。

『天使のナイフ』は薬丸岳の記念すべきデビュー作である。江戸川乱歩賞を受賞しているが、まあそれは気にしないでほしい。良い意味でも悪い意味でも。

ミステリーとしての出来はもちろんだし、少年犯罪という非常に難しいテーマを抱えたストーリーも重厚で、めちゃくちゃ読み応えがある。読み終わった後、何かが抜け落ちてしまい、ベッドに飛び込んだ記憶がある。それくらい読むのにエネルギーを費やす必要があり、逆に言えばそれだけの価値がある作品と言える。

話はそれるが、薬丸岳はこれまで数々の名作を世に送り出してきたが、なかなか日の目を見ることがなかった。しかし遂に待望の映画化である。『天使のナイフ』ではないが、同じく少年犯罪をテーマに据えた『友罪』である。こちらも強烈なので、オススメである。

 

これを機に売れるといいなぁ。

 

儚い羊たちの祝宴

 

 

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。 

 

これもそうだなー。米澤穂信はいい作品をたくさん書いているのだが、評価されるべき作品がちゃんと評価を受けていないように思う。

特にこちらの『儚い羊たちの祝宴』である。タイトルからして意味がまったく分からないのだが、それでも独特の“怪しさ”みたいなのがムンムン漂ってくる。これは間違いない。

この作品は短編集になっている。しかもあるルールに従った短編集である。

そのルールを書きたい所なのだが、読者の楽しみを奪ってしまうので明言は避けたいと思う。まあ、とにかくこれは最高ってことだ。色んなミステリー短編集を読んできたけど、個人的にベストに近い作品である。

 

それにしても、紹介文の優秀さよ。「脳髄を冷たく痺れさせる」とか最高すぎる謳い文句でしょ。覚せい剤のことを隠語で“冷たいの”なんて言うのだが、確かに『儚い羊たちの祝宴』で得られる快感は、覚せい剤のそれに近いものがあるのかもしれない。それだけ強烈な作品だということ。

 

 

家日和

 

 

会社が突然倒産し、いきなり主夫になってしまったサラリーマン。内職先の若い担当を意識し始めた途端、変な夢を見るようになった主婦。急にロハスに凝り始めた妻と隣人たちに困惑する作家などなど。日々の暮らしの中、ちょっとした瞬間に、少しだけ心を揺るがす「明るい隙間」を感じた人たちは…。今そこに、あなたのそばにある、現代の家族の肖像をやさしくあったかい筆致で描く傑作短編集。 

 

強烈な作品ばかりが連続したので、息抜きの意味も含めてハートウォーミングな作品を挟んでいこう。

こちらも奥田英朗である。同じ作者ばかり紹介して申し訳ない。しかし面白いんだから仕方ないだろう。

最初に紹介した『オリンピックの身代金』を代表するように彼は長編作品の鬼である。彼の長編作品はとにかくハズレがない。登場人物が魅力的すぎて目が離せなくなってしまうのだ。

しかしこちらの『家日和』は短編集だし、なんなら出てくるのはあくまでも“普通の人たち”である。なんの変哲もない人たちの、ささやかな“問題”を描いた、非常にスケールの小さい作品なのだ。

でもこれが読ませる。サクサク読ませる。

我々と変わらないような普通の人たちだからこそ、そこには大きな問題は必要なくて、ありふれた小さな問題があれば、それだけで上質なドラマになってしまうのだ。

そして、なによりも凄いのは奥田英朗の憑依芸的な筆である。ありとあらゆる登場人物に成りきった描写は、本当に「本人が書いているんじゃないか」と思うほど、パターン豊かだ。

 

いやー、本当に奥田英朗はすげえ。長編も短編も、しかも両方共違う攻め方で読者を愉しませてしまうのだから。

 

 

陽気なギャングの日常と襲撃

 

 

嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった……はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ! 奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス! 

 

同じ作者を何度も…と言ったそばから今度は伊坂幸太郎である。しかもこちらの『陽気なギャングが地球を回す』は本屋大賞の第一回の応募期間から若干外れている気がする。そうなると、今回の記事の趣旨である「本屋大賞にランクインしていない」からも外れることになる。そもそも対象期間に発表されていないからだ。

だがあえて私は言おう。「それがどうした」と。

伊坂だ。今更オススメする必要などない伊坂だ。だけどオススメする。オススメするだけの価値がある作品だからだ。オススメせずには死ねない。いや、死ねるけど。いや、死にたくはないが…。

と、このように、ひとりの人間のまともな判断力さえも奪ってしまうのが『陽気なギャングが地球を回す』である。

 

ストーリーを説明するのは簡単だ。「詐欺師が活躍する話」である。

どんな創作物でもだが、私がこれまで見てきた範囲で「詐欺師」をテーマに据えてつまらない作品というのは存在しない。詐欺師を活躍させたら、それはイコール“面白い作品”なのだ。

しかもそれを書いたのがあの伊坂幸太郎である。ならば極上のエンタメになるのは至極当然の話。最高の読書体験が待っているに決まっているのだ。

 

伊坂幸太郎は基本的にシリーズものを書かない作家なのだが、『陽気なギャングシリーズ』はすでに3冊も上梓されている。それだけ伊坂がお気に入りの作品なのだろう。もちろん私も大好きだ。

 

続編がまったく同じクオリティというのも、非常に珍しいかも。しかも3作とも、である。

 

 

さよならバースディ

 

 

霊長類研究センター。猿のバースディに言語習得実験を行っている。プロジェクトの創始者安達助教授は一年前に自殺したが、助手の田中真と大学院生の由紀が研究を継いだ。実験は着実に成果をあげてきた。だが、真が由紀にプロポーズをした夜、彼女は窓から身を投げる。真は、目撃したバースディから、真相を聞き出そうと…。愛を失う哀しみと、学会の不条理に翻弄される研究者を描く、長編ミステリー。

 

泣きと笑いの名手である荻原浩。彼も上手いこと上手いこと。まあオススメ作品だらけですよ、著作が。荻原浩の溢れる人間愛から生み出される作品は、どれもこれも読者のハートを確実に撃ち抜いてしまう。

こちらの『さよならバースディ』は荻原作品の中でもかなり初期に発表された作品になる。最近の作品ではまったく手を出さなくなってしまったが、初期はミステリー要素の強い作品をけっっこう書いていて、これが意外と上質だったりしたから驚いたものだ。荻原浩は完全にドラマで勝負するタイプの作家だと思っていたからである。

 

一応『さよならバースディ』はミステリーに分類される作品だが、肝となっているのはドラマである。やはり荻原浩はドラマでこそその魅力を最大限に発揮する。

他の作品で見られるような「思わず笑ってしまう」ような描写が完全に封印されていて、物語を通して深い深い悲しみが横たわっている。この辺りがAmazonのレビューで評価が分かれている部分だと予想されるが、私はこういった“悲しみ”もエンタメ作品としては無くてはならない要素だと考えているので、むしろどストライクであった。こういう感性の自分でラッキーだったかも。

 

切ない作品を読みたい人には超オススメ。切ない作品を読むと不思議な癒やし効果がある。

 

 

さまよう刃

 

 

自分の子供が殺されたら、あなたは復讐しますか? 長峰重樹の娘、絵摩の死体が荒川の下流で発見される。犯人を告げる一本の密告電話が長峰の元に入った。それを聞いた長峰は半信半疑のまま、娘の復讐に動き出す――。遺族の復讐と少年犯罪をテーマにした問題作。 

 

私ぐらいの本読みになると、東野圭吾の存在というのは好き嫌いのレベルを超えて、業界を支える柱だと認識している。インフラと同じなのだ。

だから彼の作品には全然興味が持てなくなっていたとしても、その活躍は願って止まない。ぜひとも小説業界にお金を落とし続けてほしいと思っている。その一方でもちろん東野圭吾以外の作家にもガツンと売れてほしいと願っている。というような東野圭吾作品の是非についてはまたの機会に譲るとしよう。

 

それにしても、やはり日本小説界の巨人は伊達ではない。

彼の作品の中には、どうしても避けて通れない作品がある。本屋大賞にランクインしている作品は正直言って大したことない。選ぶべきは『さまよう刃』のような作品である。

東野圭吾の偉さは、挑戦にある。これだけ売れに売れて、人気を確保しているのだ。守りに入っても批難こそするかもしれないが、理解はできる。

だが東野圭吾は攻めの姿勢を崩さない。守りの作品がないとは言わないが、攻める姿勢は失わない。『さまよう刃』だって、到底万人にウケるような作品ではない。逆に嫌われるような作品だ。

でも東野圭吾はあえて書く。きっとそうやってこれまでのキャリアを築いてきたのだ。いまさら戦い方を変えるわけにはいかないのかもしれない。

そういった東野圭吾の“攻め”を感じる上でも非常に貴重な作品。作家が魂を懸けるってのは、こういうことなのだろう。

 

 

ヴォイド・シェイパ

 

 

人は無だ。なにもかもない。ないものばかりが、自分を取り囲む―ある静かな朝、師から譲り受けた一振りの刀を背に、彼は山を下りた。世間を知らず、過去を持たぬ若き侍・ゼンは、問いかけ、思索し、そして剣を抜く。「強くなりたい」…ただそれだけのために。 

 

最後はこちらである。

本屋大賞に限らず、賞レースから完全に見捨てられているのが森博嗣である。しかし彼の著作は常に売れ続けている。出版社からは好かれているが、賞レースの選考委員からは嫌われているのかもしれない。思えばデビュー作の『すべてがFになる』だけじゃないだろうか、受賞作品は。しかもメフィスト賞だし。あんなん賞の内に入らん。

 

まあそれはいいとして、『ヴォイド・シェイパ』である。

私は森博嗣の熱烈なファンだ。何度も繰り返し読んだ作品だってたくさんあるし、フレーズだけやけに頭に残ってしまい、ふと読み返したりすることもあったりする。それくらい夢中になっている作家だ。

で、そんな森博嗣作品の中でも「これぞ最高傑作」と決めつけているのが『ヴォイド・シェイパシリーズ』である。そう、シリーズ全部をまとめて最高傑作だと評価している。

 

文章がとにかく気持ちよくて、独特の浮遊感でハイにさせられてしまう。でもテンションが上がるような感じではなくて、静かな興奮とでも言おうか、とっても上品な興奮を味わえる。

同じく森博嗣作品で言うと完全に『スカイ・クロラシリーズ』の系譜である。あちらも似たような魅力があるが、いかんせん専門用語が多すぎて作品に入りきれない部分がある。

その点、『ヴォイド・シェイパ』は剣豪小説なので、知らない単語はまず出てこない。なんのストレスもなくスルスルと言葉が脳細胞に吸収されていく。この快感は病みつきになる。

 

全部で5作からなるシリーズなのだが、作を追うごとに面白くなっていくので、ぜひ通しで愉しんでほしいと思う。

 

それにしても、この神がかった装丁が本当に好き。鈴木成一デザイン室は優秀すぎる。 

 

以上。参考にされたし。