どうも。
面白かった本のレビューです。
概要
小説家という職業 (集英社新書) | ||||
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超人気作家である森博嗣が、相変わらずの独特にして真理を思わせる切り口で自身の職業“小説家”について語った本書。
森博嗣の本はどれもそうだけど、我々が知らず知らずのうちにハマっている先入観をあっさりと取っ払ってくれる力がある。こんなに頭が良かったら世界はどんなふうに見えるんだろうかと彼への興味が尽きない。羨ましい。
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小説を読むな?
本書の冒頭ではこんな刺激的な言葉が書かれている。
もしあなたが小説家になりたかったら、小説など読むな。
小説を書く仕事がしたいのなら、自分が好きなものを一旦忘れなさい。
これは決してウケを狙って書かれた(炎上させるような)文章ではない。
森博嗣自身、推理小説を読んでいたのは小学生の頃だけだったらしい。それでもベストセラー作家になれてしまったわけだ。
プロになるということ
「仕事は楽しむもの」
そんな風潮が蔓延している昨今であるが、森博嗣はこれに真正面からNOを突きつけている。
仕事というのは、苦労や労働に見合った報酬を得る行為である。自分ではやりたくないからお金を払って人に依頼する。ビジネスはこうして成り立っている。
そんなことを書きながら、森博嗣はこの本を1週間ぐらいで書き上げてしまっているらしい。しかも1日1時間しか執筆していないとか書いてあるし。全然苦労してないじゃねえか!
自分がやって楽しいことに対して誰かがお金を払ってくれるのならば、こんなに素敵なことはない。
だが残念ながらそうそう上手くことは運ばないわけで。
やっぱり私のような普通の人の場合は、苦労や労働を差し出すしかないようである。
その上で仕事の楽しみを見つけられたら、それで十分幸せじゃないだろうか?
やれることとやるべきこと
森博嗣と同じような結果を出すのは難しいかもしれないが、彼のやり方は参考になると思う。
夢見がちな私たちはすぐに「好きなことで生きていく」とかいう短絡的なことを言ってしまう。
しかし好きなことと生きていくことはベクトルが全く違う。
好きなことは自分の内に向かうものであり、生きていくためには外に認められる必要がある。
他者に認められたかったら、自分がやりたいことではなく、自分のできることの中で他者が求めることをやるべきなのだ。
どれだけ自らに「何ができるか?」「何をするべきか?」という問いかけができるかが大事なのだろう。
「好きなことで生きていく」はとっても都合が良くて耳に心地よい言葉だ。それを実現できたあかつきには、好きなことが嫌いになっているんじゃないだろうか。
都合の良いことを言われると人はどうしてもそれに期待してしまう。甘言というやつだ。
きっとそうやって扇動することで得をする人がいるのだろう。
しっかりと現実を見つめていられる自分を保ちたいものだ。
小説家という職業 (集英社新書) | ||||
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