どうも。
今回はこちらの作品である。
僕だけがいない街 (1) (カドカワコミックス・エース) | ||||
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毎日を懊悩して暮らす青年漫画家の藤沼。ただ彼には、彼にしか起きない特別な症状を持ち合わせていた。それは…時間が巻き戻るということ! この現象、藤沼にもたらすものは輝く未来? それとも…。
構成は文句なし
この作品の最大の見所は主人公の超能力を軸とした、謎解きにある。
2015年のマンガ大賞に選ばれただけあり、その魅力的な謎と展開でグイグイと読ませられる。というか読まずにはいられない。それぐらい強烈な力を持っている。
この設定を思いついた時点で売れることが決まっていたと言っても過言ではない。
ただ、こういった作品の弱点としてよく見られる「作品」と「連載」の問題が今回も感じられてしまった。
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謎を提示する作品の宿命
『僕だけがいない街』は全8巻。かなり短めな作品と言える。
だがそんな短い作品でも私は後半辺りから、作者の時間稼ぎを感じてしまった。
こういった作品は読者の目の前に「謎」という人参をぶら下げることで読者を引っ張ることができる。しかしいつまでも謎がまったく明かされないままだと、読者はいつか「どうせ解決しないんでしょ?」と諦めてしまい、読む気が無くなったりする。某少年探偵マンガを思い浮かべてもらえれば納得するだろう。
なので作者はコンスタントに、新たな謎か、ちょっとした進展か、ヒントを読者に提示し続けなければいけない。
これをやるには徹底した構成が必要になる。その場その場の思いつきでやろうものなら、いつか破たんしてしまう。
作品か 連載か
しかしそこで問題になるのが、「連載」である。
ここまでの人気作となると、連載しているかどうかで雑誌の売上に影響が出てしまう。
少しでも連載を引き伸ばしてもらいたいのは編集部の本音だと思う。しかしそれだと作品が死ぬ可能性が上がるし、作者の脳みそにも負担がかかる。いっそバトル要素でも入れられれば良かったのだが、この設定ではそうもいかない。
ネタバレはしないが、それの葛藤の間を取ったのがあの後半の展開に繋がるのだと思う。
正直私はあの展開を冗長に感じてしまった。蛇足だったとも思う。
ただそれを責められるわけもなく、お金のためであれば仕方なかったのかなと理解するだけである。
惜しい点
この作品の構成に関しては冗長な部分はあるものの、肝となる謎には何の影響もなく、非常に満足している。作者のその優秀な頭脳には拍手を送りたい。
ただこの作品の難点はポップさにあると思う。
シリアスな中身と、作品に散りばめられたポップさがあまりにもアンバランスなのだ。それが悲しい。
たぶん作者の性格というか、気質的なものが元々ポップな感じなのだろう。それが作品の随所に出てしまっている。
なんというか、それが少々作品を台無しにしてしまっているような気がせんでもない…。あくまでも個人的な意見であるが、私は好きではなかった。
謎とギャグというのはなかなか相性が悪い。謎を提示しているような作品で読者に「笑い」を仕掛けるのであれば、「ガハハ」というものではなく、「にやり」とさせるものが適正だと思う。つまり皮肉だったり、気の利いた言い回しだったりである。
ただこの点はあくまでも作品の装飾部分であって本質ではないので、作品を楽しむ上ではまったく問題ない。…と思う。
切れ味十分
冗長な部分があるとは言ったものの、全8巻という短さといい、話の展開といい、スピード感十分でサクッと読めてしまう。展開がスピーディーなのでついついページを捲りたくなってしまうが、ちゃんと至る所に伏線が仕込んであり、主人公の考察も素晴らしいものだったりするので、しっかりと吟味してもらいたいものである。
魅力的な謎、それにふさわしい構成、切れ味十分な内容は新たなミステリーマンガの金字塔としてその名を残すことだろう。
ぜひ手に取っていただきたい。
以上。
僕だけがいない街 (1) (カドカワコミックス・エース) | ||||
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