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閉鎖空間系のマンガが流行ってるけど『キムンカムイ』が最強だから

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どうも。

昨今のエンタメ作品には閉鎖空間系が大流行している。

映画であれば『SAW』なんかが代表作になるだろう。マンガとなるといくらでもあって、紹介する気にならないぐらいだ。どれもこれも似通ったものばかり。あんまり読んでないけど。

なぜこんなにも閉鎖空間系が流行っているのかと疑問に思っていたのだが、考えてみれば昔の推理小説なんてのは「雪の山荘」や「人里離れた山奥」、「絶海の孤島」など限定空間の中でいかに意外な結末へと読者を誘うかというものばかりだった。

自分たちの想像を越えた展開や驚愕の真実を与えてくれる「閉鎖空間」を軸に据えた物語というのは、いつも時代も私たちの心を掴んで離さないのだろう。

ただ生み出す側からすると、現代では携帯やネットの普及により、こういった設定がなかなか難しくなってきているのも事実。よほどの力技を使わない限り(異次元空間に迷い込んだ的な)、閉鎖空間というものはなかなか作り出せない。

 

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閉鎖空間の恐怖を描いた名作

そこで紹介するのが、この『キムンカムイ』である。1999年に少年マガジンで連載されていたものだ。

キムンカムイ―Nature panic drama (1) (少年マガジンコミックス)

三枝 義浩 講談社 1999-07
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内容を書くと即ネタバレになってしまうので、下手なことが書けないのが辛い所だが、それはいつものこと。私はこれまでに小説を含め数多くの作品を紹介してきたが、『あらすじだってネタバレ』という信念の元、苦しみながら文章を綴ってきた。この作品も核心に出来るだけ触れないように紹介していきたいと思う。

熊がヤバい 

表紙に熊の絵が描いてあるので想像がつくと思うが、この作品には熊が出てくる。また熊の目を見ていただきたい。白目をむいている。これはマンガの中で出てくる悪役に感情を持たせたくないときに使う手法である。つまりこの作品の中で熊は悪役である。そんな説明だけで十分であろう。

実は熊を取り扱った作品というの数多くある。名作もたくさんあるが、それらはある事件が元になっていたり、影響を与えたと思われる。

これがこれである。非常に長い記事なのだが、身の毛もよだつ恐怖とはまさにこの事だと思わされる事件だ。ヘタな怖い話ではまったく太刀打ちできないレベルだ。 

三毛別羆事件 - Wikipedia

余談ではあるが、私は夜中にこの記事を読んで、怖さのあまり1階のトイレに行けなくなったことがある。埼玉に熊はいないにも関わらずだ。勘違いしてもらいたくないのだが私がビビりなせいではない。これでも二児の父だ。それくらい熊は怖いということなのだ。 

展開がヤバい

話が逸れたが、たぶんこの『キムンカムイ』もこの事件を参考に描かれている。

だが、こちらは正真正銘のフィクションだ。いくらでもエンターテイメントにすることができる。つまり、読者を恐怖のどん底に突き落とすことに特化しているということだ。

物語は少年達が山にハイキングに行く所から始まる。恐怖映画の冒頭よろしく、非常に平和な描写が続く。

だがその時間は長く続かない。

しかも続かないだけではなく、一話、また一話と重ねるごとに状況が悪化していくのだ。私は連載当時にリアルタイムで読んでいたのだが、「助かる可能性潰しすぎだろ!」と絶望的な気分になっていた。それと同時に「どうやって助かるんだろう…?」という興味も尽きなかった。はやく続きが読みたくて仕方なかった。

 

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圧倒的なリアルさ

自分たちには不可能だと思える状況から、いかに主人公達が助かるかが「閉鎖空間系」の見どころなのだが、解決に至る伏線などが綺麗に回収されたりすると更に快感である。そして昨今の作品達はその辺の勘所を非常によく抑えられている。

だが、そのせいである重要な要素が抜け落ちてしまっている。読者を作品世界に引き込むための重要な要素が。

つまり、現実感だ。

言うなれば、最近の作品たちはSFであって現実とはまったくかけ離れた世界なのだ。いくら主人公たちが危機に陥ろうとも、「どうせ作り物の話だし」という覚めた視点になってしまう。読者は登場人物たちと一緒になっているのではなく、物語の上から「どうやってこの問題が解決するんだろう」と神の視点になってしまっているのだ。これでは熱中できない。もしかしたら驚愕の展開に興奮することはあるかもしれないが、それは物語世界にハマった時の興奮とは別物である。

だが『キムンカムイ』は違う。圧倒的にリアルだ。非常に現実的な設定にしてある。出てくる登場人物たちも私たち一般人となんら変わりない。普通の人達だ。普通の人達だからこそ、読者は一緒に物語の中に埋没してしまうのだ。

 

他では得られない恐怖体験をしてはいかがだろうか。刺激的な経験になると思う。

 

以上。

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