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どんでん返しがある、と先に言い切る凄さ。『ウォッチメイカー』

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面白いミステリーが読みたい人、集合。

世界中が認める作品を紹介する。

 

全米一優秀なミステリー作家が放つ人気シリーズ

今回紹介するのは、エンタメの聖地であるアメリカが生んだ天才作家ジェフリー・ディーヴァーの作品。

彼の代名詞といえば、四肢麻痺患者である名探偵“リンカーン・ライムシリーズ”だろう。

 

このシリーズは今現在で11作品ほど発表されているのだが、どれも最高に面白い。

なのだがその中でも「シリーズ最強」と謳われているのが、今回紹介したい『ウォッチメイカー』である。

ウォッチメイカー〈上〉 (文春文庫)

ジェフリー ディーヴァー 文藝春秋 2010-11-10
売り上げランキング : 40465
by ヨメレバ

“ウォッチメイカー”と名乗る殺人者あらわる。手口は残忍で、いずれの現場にもアンティークの時計が残されていた。やがて犯人が同じ時計を10個買っていることが判明。被害者候補はあと8人いる――! “人間嘘発見器”こと尋問の天才キャサリン・ダンス捜査官とともに、リンカーン・ライムはウォッチメイカー阻止に奔走する。2007年度のミステリ各賞を総なめにしたジェフリー・ディーヴァーの代表作。 

あらすじは色々と書いてあるが、私が皆さんに伝えたいことはただひとつ。

 

「四の五の言わずに、さっさと読めや」 

 

である。多少乱暴な言い方になってしまったことを許していただきたい。

というのも、ジェフリー・ディーヴァーという作家は元弁護士という経歴からも分かるように、正真正銘の切れ者である。

そんな男ががだ、読者の心を手玉に取るために「最強に面白いミステリー」を書いたらどうなるかお分かりか。読者は悶絶である。悶絶しすぎて悶死するだろう。

どうだろうか、悶死してみたくはないだろうか。であれば読むしかないだろう。

 

最高の読書体験が本作にはあるのだ。

 

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キャッチコピーは「どんでん返し」  

『ウォッチメイカー』を語る上で外せないワードがある。

「どんでん返し」である。

 

私は数々のミステリー作品を紹介してきたが、紹介する中で絶対に使わない言葉があった。それが「どんでん返し」なのだ。

 

本屋に普段から行く人はよくご存知だと思うが、本の帯や宣伝文などにデカデカと「どんでん返し!」「最後の◯ページで世界がひっくり返る!」などという文句が書いてあることがよくある。あまりにも頻繁に見かけるので、最近ではむしろ「へぇ~、この作品はどんでん返しがないんだー。めずらしいじゃん」なんてことを思ってしまうぐらいである。誰かなんとかしてくれ。

 

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面白いかどうかよりも、いかに売るか

そしてほとんどの作品が実は何にも「どんでん返せていない」から犯罪的である。

本というのは読んで見ないと面白いかどうか分からない。読者は面白いことを確かめるために本を買うことになる。

つまり面白いかどうかは本が売れることに関してはあまり関係がなく、とりあえずみんなが食いつきそうな煽り文句を書いておけば売れてしまうのが現実なのだ。だから詐欺みたいなことを出版社は仕掛けてくるのだ。

 

「どんでん返し」で損する人、得する人

まあそれは私の愚痴みたいなものなので置いておくとして。

この「どんでん返し」という謳い文句は非常に危険である。これを書くことで出版社はよく本が売れるようになるからどうでもいいのだろうが、読者である我々にとっては不利益しか発生しない。

読む前に予備知識として「どんでん返しがある」と分かってしまえば、読みながら構えてしまうだろう。その結果、いらん伏線に気付いてしまったりして「どんでん返されない」なんてことになる。「どんでん返しがある」と書くと、どんでん返しが無くなってしまうというパラドックスを抱えているのだ。

また、「どんでん返し」を期待するために、どんでん返しが起こる前のストーリーを話半分で読むことにもなる。だってどうせひっくり返されてしまうのだから。

 

というように、「どんでん返し」という言葉で得するのは出版社だけであることがご理解いただけただろうか。

どんでん返しというのは、著者と読者の間でひっそりと、そして確実に交わされていればそれでいいのだ。公衆の面前でおおっぴらに喧伝するようなことではないのだ。恥を知れ恥を。

 

でも『ウォッチメイカー』は違う

さて話を『ウォッチメイカー』に戻す。

 

私のポリシーには反するが、やはりこの作品の見所は「どんでん返し」にあると言わざるをえない。それぐらいどんでん返しに特化した作品なのだ。

だが、安心してもらいたい。

私はこれまでに1000冊ぐらいミステリー小説を読んできたが、その中でも屈指の面白さを持つのが『ウォッチメイカー』である。生半可な読者の予想は簡単にあしらってくれるだろう。

それに、確かにどんでん返しを売りにしている作品ではあるが、別に世界がひっくり返るとかそういう類のものではない。ストーリーという論理の積み重ねの先にある「驚きの展開」であり、ちゃんと読み進めた者のみが味わえる衝撃である。

 

『ウォッチメイカー』を読み始めたときはあまり期待していなかった。上にも書いた通り、「どんでん返しがある」と事前に知っていたからだ。

でも私の予想は鮮やかに裏切られた。嬉しい裏切られ方だった。

これだけ心地よく欺いてくれる作品はそうそうないだろう。

 

そして、ジェフリー・ディーヴァーの悪魔的頭脳に畏敬の念を抱いたのだった。

 

エンタメの聖地であるアメリカが生んだ稀代のストーリーテラー、ジェフリー・ディーヴァーの才能を思い知ってもらいたい。

 

世界基準のミステリー小説とは『ウォッチメイカー』のことである。

 

以上。

 

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