俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

俺だってヒーローになりてえよ

画像の説明
画像の説明
画像の説明
画像の説明
画像の説明
画像の説明

浄化されること間違いなし。瀬尾まいこ『あと少し、もう少し』

f:id:summer39191628:20181125203512j:plain

 


どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。
今回も素晴らしい作品を見つけたので、ご紹介したい。

 

 

内容紹介

 

 

陸上部の名物顧問が異動となり、代わりにやってきたのは頼りない美術教師。部長の桝井は、中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを募り練習をはじめるが…。元いじめられっ子の設楽、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介。寄せ集めの6人は県大会出場を目指して、襷をつなぐ。あと少し、もう少し、みんなと走りたい。涙が止まらない、傑作青春小説。

 

実は今回紹介する『あと少し、もう少し』だが、事前にあらすじさえも知らない状態で、まったくの手探り状態で読み始めた。

たぶんそれが功を奏したと思う。最高の読書体験をさせてもらった。

もともとアマゾンのレビューでも高評価を連発している名作である。あらすじを把握して読んでもきっと楽しめたはずである。

でもそれでも先を知った状態で読むのと、登場人物と同じレベル作品世界に翻弄されるのでは、読書体験の濃度が違うだろう。この読み方はオススメである。

ただ、それと同時に自分の好みとは違う作品を引き当てる確率も高くなるので、読書家以外にはオススメできない楽しみ方である。変態だけこっちにいらっしゃい。

 

 

比べてしまう、あの名作と…

 

さて、この名作の魅力を語る前に大事なことに言及しなければならない。

冒頭であらすじを読まない方が楽しめると書いたばかりで申し訳ないが、若干内容に触れる。

『あと少し、もう少し』は駅伝をテーマにした作品である。

で、駅伝と言えば超が付くほどに有名な作品がある。作者も超有名作家。

それは『風が強く吹いている』だ。

かたや中学生、かたや大学生の違いはあるものの、どちらも駅伝を扱った小説の名作と呼ぶに相応しいと思う。

 

しかしだ。

どちらの作品も読み終えた私は言いたい。しかも2作連続で読んでみた。

※ちなみに、こういった「同ジャンル連続読み」は作品の面白さを半減させるので、基本的にはしない

 

作品に優劣を付けるのはよくないと分かってはいるが、ここはあえて書こう。

 

『あと少し、もう少し』の方がいい…!

 

しかも、けっこうぶっちぎりで。


理由を具体的に挙げるとネタバレになってしまうので、ぼんやりとしか書けないのだが、端的に記すと、

 

『風が強く吹いている』は、分かりやすいエンタメを提供するマンガ的な面白さ
『あと少し、もう少し』は、リアルな描写に徹底した身につまされる面白さ

 

私がいちいち言うまでもなく『風が強く吹いている』は名作である。めちゃくちゃ売れているし、みんな大好きだ。アニメ化だってしてるし。実際、アニメ向きの作品だと思う。

 

でも、ちょっとばかし私が小説に求めるような面白さとは違っていた、というだけの話であり、本当の意味での優劣なんて付けられない…とフォローを入れておこう。

 

 

構成がにくすぎるっ

 

『あと少し、もう少し』は中学生の駅伝の様子を描いた連作短編集である。

なのだが、ただの連作短編集ではない。少し、というかかなり思い切った趣向を凝らしている。

その趣向というのは、駅伝というテーマを扱った小説ならではというもので

各話の主人公が出走順に入れ替わっていくのだ。

駅伝に参加する6人の物語が、それこそ襷を渡すかのようにリレー形式で進んでいく。

 

同舞台で起こるひとつの事件に対して、いくつかの視点から順次描いていく、という手法は、物語世界の深さを出したり、没入感を出すための演出として、よく使われる。

しかしながら、駅伝になぞらえて、一人ひとりのドラマを完全に描ききってしまう(襷を渡した時点でその走者の出番は終わる)、というのはなかなか思い切っている

 

 

サビの出し惜しみをしない

 

駅伝をテーマにした作品なので、作品のサビとも言える部分はもちろん駅伝レース本番である。

一番盛り上がる部分なのだから、本来であれば作品の一番最後に取っておくのが常套手段だし、読者としても最後の楽しみとして待っていたい部分がある。

しかし『あと少し、もう少し』ではそんなことはしない。一人ひとりの走者のエピソードを語りきってしまう。駅伝本番の様子も各話で書いてしまう。

 

これには参った。正直「あぁ、駅伝本番は最後に取っておいて!」と思ってしまった。

でも読み進めるうちにすぐに分かった。作者は本当の意味で駅伝レースを描きたかったのだと。

襷を繋ぐことと、ひとつのドラマが完結することは同義なのだ。


走者ごとに始まりがあり、終りがある。その繰り返しで駅伝というレースはできている。

まさに著者の瀬尾まいこは、小説という形を使って、読者に駅伝の奥底にある魅力を味あわせているのだ。すげえよ、これは。鼻血出るぜ。

 

 

全部入ってます

 

『風が強く吹いている』ほどではないが、『あと少し、もう少し』の走者たちも色とりどりのキャラが揃っている。

で、このキャラたちがまたいい。

「中学生を扱った小説の美味しいところ」が全部入っていると言っていいレベル。

走者6人それぞれが違う問題を抱えていて、それぞれの覚悟を持って駅伝に参加している。

 

それぞれの走者の特徴が本当に上手いところを突いていて、まるで中学生のときの自分を見るかのようで、悶ながら読んでしまった。どうだ、30過ぎのオッサンを悶えさせる小説なんて見たことあるか。私の様子は最高に気持ち悪かったはずだが、『あと少し、もう少し』はそんな私の気持ち悪さも綺麗サッパリ浄化するぐらいに爽やかな作品なので、ご安心いただきたい。

ちなみに各走者の特徴を列挙して皆さんと共有したいのだが、作品の核にせまってしまう部分なので控えることにする。こんな素晴らしい作品の面白さを失わせることなんて、私には到底できない。ぜひとも読んで確認してもらいたい。ありゃ泣くよ。

 

ということで、実は結構トリッキーな作品なのに、青春ど真ん中を描ききっている最高の作品でした。超オススメ。これは布教せずにはいられんでしょ。

 

以上。