命短し恋せよ乙女。
どうも、乙女とは真逆の存在おっさんブロガーのひろたつです。よろしくどうぞ。
今回紹介するのは、一風変わった読書体験をさせてくれる名著である。そう、間違いなく名著だ。
内容紹介
「いつ最後の日が来ても後悔はない」。そう胸をはって言える人生を送っていますか?
人は、なぜかみな、「自分だけは死なない」と思っているものです。
でも、残念ながら、みな、いつか必ず死にます。
それを受け止めることこそ、「生」を輝かせることにつながります
。 自分が「いつか死ぬ身である」ということをしっかり心に刻み込めば、自分のほんとうの気持ちに気がつき、もっと自分らしく、人生を輝かせることができるのです。
本書では、ひすいこたろうが、27の質問を投げかけます。
「あなたが両親を選んで生まれてきたのだとしたら、その理由はなんだろう?」
「いま抱えている悩みは、たとえ人生最後の日であっても、深刻ですか?」
「もし今日が最後の日だとしたら、今日やろうとしていたことをする?」
などといった質問のほか、 自分の墓碑銘や死亡記事を書いてみるワークも。
今生きているということこそ、奇跡であることを受け止め、新しい自分で、新しい人生を歩き始めてみませんか?
「今日が最後の日だとしたら」
この問いは、故スティーブ・ジョブズが毎朝鏡の前で己に投げかけていたことで有名である。もし今日が最後の日だったとしても、今日のスケジュールを全うするだろうか、といったふうに活用していたそうだ。
正直、凡人中の凡人である私からすれば、毎朝自分にそんなことを問いかけているスティーブ・ジョブズは変態にしか思えないのだが、それだけ本気で生きていたからこそ、彼はあれだけの偉業を薄毛にもかかわらず達成したのだとも思ったりする。まあ、薄毛は関係ないのだが。
ただ、一方でこの考え方は劇薬でもある。
昨今流行りの“無敵の人”のように、「明日死ぬんならどうでもいいや」と自暴自棄にだってなれるからだ。あくまでも前向きに使わなければならない。例えば「もしかしたら明日髪の毛が全部無くなるかもしれないから、思い切った髪型をしてみよう。せめて髪型だけでもスティーブ・ジョブズに勝とう」みたいな感じだろうか。
人生の取り扱い方指南本
冒頭からふざけまくっているが、私が何を言いたのかお分かりだろうか。別にスティーブ・ジョブズいじりがしたかったわけではない。ちょっと筆が滑っただけだ。
「今日が最後の日だとしたら」
というこの強烈な問いかけは、人に多かれ少なかれ影響を与えるだろう。自分の中の何かを変えなければならないという、焦燥に襲われるかもしれない。
だが私たちは天才ジョブズとは違い、ごくごく普通の人である。何かを変えたいとは思うけど、一体どうしたらいいのかよく分からない。「人生をかける!」なんて大それたことを言うような高い志もない。多くの人がそうだと思う。
『あした死ぬかもよ?』は、そんな我々普通の人たちに贈られた本である。
上記の紹介文にもあるように、我々の多くが自然と「自分は死なない」と思いながら暮らしている。しかしちょっと冷静に考えてみれば、そんなことはないとすぐに分かるはずだ。分からない人はもっと冷静になれ。あんたみたいなタイプが一番すぐに死ぬから。
話がすぐにそれるのが私の悪いクセである。申し訳ない。戻そう。
つまりこの本は、我々普段あまり意識しない、いや、意識できていない人生について考え直させるための本なのだ。
作者のひすいこたろうから繰り出される、普段であれば絶対に考えないであろう角度からの27の質問。それに対し、真剣に考えるだけで、新たな視点がもたらされる。今まで漫然と過ごしてきた「人生」に新たな形を与えるのだ。
言うならばこれは“人生の取り扱い指南書”である。
体験させる、という本
音楽市場では年々CDが売れなくなっているそうだ。当たり前の話だ。YouTubeを開けば、すぐに好きなアーティストの楽曲を楽しむことができる。わざわざ音源を買う必要がどこにあるだろう。
しかしその一方で、ライブなど“体験型”の音楽イベントの観客動員数は年々増え続けているのだ。より大きな刺激がある方へと進んでいるようである。
この“体験”という所がポイントだ。
一人で部屋で音楽を聴いても楽しむことはできる。快楽だって得られる。
しかし、耳だけでなく、自分の体を動かし、目で、肌で、鼻で、空気で感じるものは、部屋に籠もっているだけでは絶対に味わえないような濃い経験になるだろう。
『あした死ぬかもよ?』はそんな“体験”を味あわせるような構成になっている。ネタバレになってしまうので具体的な内容は書かないが、所どころに仕掛けが施してあって、読者が「おっ」となるように仕向けている。
これによって読者は「なんか凄い本を読んだな」と思ってしまう。明らかに他の本とは違う体験をさせられるからだ。
そもそも『あした死ぬかもよ?』というタイトルからして、メタ的というか、こちらの脳内をハックする言葉である。最初からひすいこたろうのペースに巻き込まれていると言っていい。
悪い意味じゃなく、人を操るのが上手い
『あした死ぬかもよ?』を読んでいると、自然と気分が上がってくる。
読み終え、こうやってレビューを落ち着いて書いている今だからこそ分かるが、ひすいこたろうは生粋のペテン師である。もちろん悪い意味ではない。騙すという意味でもない。
これは「人を意のままに操る天才」という意味である。
彼は本当に人が好きで、みんなのためになろうと考えた結果、このような本が生まれたのだろう。文面を読んでいると、そんな彼の気持ちが溢れんばかりに伝わってくる。
その一方で、ちゃんと計算も働いている。「どうすれば読者を扇動できるか?」、または「どうやったら売れる本になるか?」と。
作家だって仕事である。売れなければ食えなくなる。「たとえ数が少なかったとしても、自分の伝えたかったことが伝わればそれでいいんだ!」みたいなのはありえないのだ。プロであるからには数、本で言えば売上こそが正義である。
そのために、ひすいこたろうは己の「人の役に立ちたい」という熱い情熱と、「どうやってインパクトを残すか」という冷静な計算の元に『あした死ぬかもよ?』を構成している。そして大いに成功したわけだ。素晴らしいじゃないか。
ひすいこたろうがどれだけ人を操るのが上手いかは、実際に読んで体験してもらいたい。
以上。