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ミステリー小説ってのは文字だけで行なわれる手品なんだよ

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なんか勘違いされているようなので、伝えておこう。

ミステリー小説とは書いているが、ミステリー全般に言える話だ。映画、漫画、アニメなど、ミステリーというジャンルに属しているものは全部だ。

 

犯罪が起こる小説ではない

一番勘違いされているのがこれだろう。

 

犯罪が起こる小説=ミステリー小説

 

まったく違う。犯罪を取り扱った小説は犯罪小説だ。そのまんまだ。確かに犯罪が起こるミステリー小説は多い。しかし犯罪が起こらないミステリー小説もあるんだ。

ちなみにミステリー小説と推理小説はまったく同じだ。ミステリーと推理は同じ言葉ではないが、内容は同じだ。ここも勘違いしてほしくない。みんな推理小説と聞くと、「◯◯殺人事件」みたいなのを想像すると思う。ミステリー小説と聞くと、「そして誰もいなくなった」的なのを思い浮かべると思う。両方共間違いないが、どちらも推理小説であり、ミステリー小説だ。

 

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サスペンスも違う

映画では特にこれを混同しがちなのだが、サスペンスとミステリーはまったく違う。今、この文章を読んで「そんなの当たり前だろ」と思った方も多いかと思う。しかし、実際レンタルショップに行くと、サスペンスとミステリーがごちゃ混ぜになっていることがよくあるのだ。信じられないかもしれないが本当なのだ。世の中には私たちの常識から外れたアホが数多くいるという証明だろう。

サスペンスというのは、ざっくり言うと主人公が危機に陥るジャンルだ。ミステリーと近いものは確かにある。ミステリーでも主人公が危機に陥ることがあるからだ。だが、だからといってミステリーとサスペンスを混同してはならない。

 

ミステリー小説の条件

で、ここからが本題。

ミステリーというのはまず『謎』が物語の中心に据えられている。これが無いものはミステリーではない。謎さえあれば誰が出ていようが、主人公が名探偵だろうが、犬だろうが猫だろうが象だろうが構わない。ヒロインの頭に角があろうがなかろうが関係ない。人が死ななくてもいい。もっと言えば事件が起こらなくてもいい。それがミステリー小説だ。みんなが思っているよりも遥かに度量が広いのだ。

次に謎のの回答が示されていることが挙げられる。これが無いものもミステリーではない。コナン君が「この事件全然分かんないっす」とか言ってたらミステリーじゃなくなる。ギャグだ。 

この謎にも条件がある。謎というぐらいなので、読者である私たちに「謎を解くためのアイテム」を提供されていることが前提となる。読者の知らないヒントが解決の段階で出てきてはいけないのだ。理由は次の項で述べる。心してかかれ。

 

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ミステリー小説は手品

1.謎がある

2.回答が用意されている

3.その回答は読者でもたどり着けるものである

 

この条件がそろうことで、ミステリー小説に登場する「謎」が私たちにある考えをもたらす。それが「こんなの不可能だろ」というものである。この感覚が強ければ強いほどミステリー小説の味が強いものになる。

密室、アリバイ工作、などは謎を補強するためのアイテムなのだ。

 

物語の中で提示された謎の不可能感。これはまさに手品と同じである。

目の前に出されたトランプを一枚引く。トランプを確認し、手品師の持ったトランプの中ほどにそのトランプを戻す。手品師がトランプの束を叩くと、さっき選んだトランプが一番上に来ている。

有名な手品なので誰もが一度は見たことがあるだろう。ああいった手品を見たときに感じる「不思議さ」を、ミステリー小説は文字だけで演出するのだ。凄いぞミステリー小説!

 

ミステリー小説にとって一番大事なこと

手品は騙されるだけで終わる。「不思議だなぁ」と思ったら終わりだ。

しかしミステリー小説が本領を発揮するのは解決編にある。解決編にはある重要なものがある。それは真相よりも大事なものだ。そう、ミステリー小説では真相よりも大事なものがあるのだ。そしてそれが醍醐味である。

 

ミステリー小説にとって一番大事なことは、読者に「騙された!」と思わせることなのである。最初に書いた「ヒントがすべて提示されている」というのがここで効いてくる。

ヒントの提示の仕方はなんでもいい。はっきりとしたアイテムでもいい。犯人の遺留品だったり、被害者のメッセージだ。それとなく匂わせるものでもいい。小説内の文章のちょっとした記述で読者に違和感を覚えさせたり、登場人物の不可解な言動でもいい。

それらを読者に意識付けた上で、「そういうことか!すげえ!」と思わせることがミステリー小説がミステリー小説足りえる条件なのだ。逆に言えば、これができないミステリー小説はミステリーじゃないと思う。なので、名探偵コナンも正直私の中でミステリーじゃないときが多い。金田一少年の事件簿はなかなか良かったのだが…。

 

ということで、私がオススメする「これぞミステリー!」という作品を少しだけ紹介しておく。

 

◯葉桜の季節に君を想うということ

私をミステリー小説の世界に引き込んだ作品だ。これで頭を殴られたせいでミステリー中毒になってしまった。しばらく手放せなかった。

 

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

歌野 晶午 文藝春秋 2007-05
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◯十角館の殺人 

このトリックが生み出されたのは奇跡だと思う。この人が思いつかなかったら、世界が滅亡するまで誰も考えつかなかったことだろう。それぐらいの破壊力を持っている。 

 

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

綾辻 行人 講談社 2007-10-16
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 ◯GOTH

 短編集である。確か話が10話ぐらいあったと記憶しているが、その回数だけ脳みそに衝撃が走る。ミステリー初心者にはかなりオススメの一冊だ。覚せい剤なみに中毒症状を起こすことだろう。売れるからと出版社がムダに上下巻にしてしまっているのが玉に瑕だが、そんなのはまったくこの作品の価値には影響ない。

 

GOTH 夜の章 (角川文庫)

乙一 角川書店 2005-06-25
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GOTH 僕の章 (角川文庫)

乙一 角川書店 2005-06-25
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以上。