俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

こんな青春があってもいい。石田衣良『4TEEN』

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どうも。

石田衣良の直木賞受賞作『4TEEN』を紹介する。

内容紹介

4TEEN (新潮文庫)

石田 衣良 新潮社 2005-11-26
売り上げランキング : 53908
by ヨメレバ

東京湾に浮かぶ月島。ぼくらは今日も自転車で、風よりも早くこの街を駆け抜ける。ナオト、ダイ、ジュン、テツロー、中学2年の同級生4人組。それぞれ悩みはあるけれど、一緒ならどこまでも行ける、もしかしたら空だって飛べるかもしれない――。友情、恋、性、暴力、病気、死。出会ったすべてを精一杯に受けとめて成長してゆく14歳の少年達を描いた爽快青春ストーリー。直木賞受賞作。 

この作品を一言で表わすならば「キラキラ」であろう。

中2の少年たちが紡ぐこの物語は、全編を通して彼らの喜びや苦しみ、葛藤、そしてエネルギーで満ちている。

読後の爽快感はかなりのもので、私にとって「石田衣良」という作家のイメージはこれで作られた。どぎつい内容を平坦な文章でさらっと読ませるのに長けた作家だと思う。

 

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評価が割れている

さて、私は大満足したこの『4TEEN』だが、今回の記事を書くにあたり、Amazonのレビューをちょろっと覗いた所、かなり評価が割れているのを知った。驚きである。

私はあまり他人のレビューを参考にしない。他人のレビューはこうやって読後に眺めるのが一番の楽しみ方だと思っている。他の人がどんな感想を抱いたか購入前に知るのは余計なバイアスになって面白さを限定してしまうだけだ。

で、このレビューを読むとやはりみんなある“バイアス”にかかっていることが分かった。

「バカだなぁ」と思う反面、「可哀想に」とも思う。読書ってのは難しいものだ。

以下にみんなが『4TEEN』を読む上でかかってしまったバイアスについて少し掘り下げていきたい。

現実感はない

あまり引用はしないが、Amazonで酷評している人たちの意見をまとめるとこうなる。

現実感がない

ふむ。私は思う、「なんで現実感のなさにそんなに怒るのか」と。

確かに現実感は薄い作品だ。人よりも早く年を取ってしまう早老症を取り扱っていたり、自慰の回数を勝負する様子とか(もしかしたら私が知らないだけでそういう文化があるのかもしれない)、友達のために買春したりとか、言い出したらキリがない。

でも私は思う。

物語ってそういうものでしょう?

子供が主人公だとなぜか共感や思い出を求めてしまう

子供が主人公になった途端に、なぜか世の大人たちは作品に「共感」や「思い出」をそこに読み取ろうとする。

そしてその期待を裏切られると、「現実感がない」「自分はこんな子供じゃなかった!」と声高に叫ぶ。

別に誰がどういう感想を抱こうが自由なのだが、「不器用だなぁ」と思ってしまう。

普通に考えれば分かると思うが、自分の青春時代を思い出せない人なんていない。

それは作家自身も同じである。少年時代の感覚はいつでも引っ張り出せる。

だけどあえてこういう設定にしたのは、『4TEEN』がそれに相応しい物語だったからに他ならない。だって買春で友情を示そうとしたら、こんな子供たちにしないとダメでしょ?

だから『4TEEN』を普通の青春物語にすることなんていくらでもできたはずなのだ。それ単なる青春物語にせず、ちょっとしたアンバランスさを加えたのは「石田衣良の作家性」そのものだ。 

これはそのセンスを理解できるかどうかという話にも繋がると思う。もっと簡単に言うなら相性だろう

 

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小説は読み手への依存度が高い

少し前、漫画のまとめ記事を作るために狂ったように漫画を読み漁っていた。そのときは完全に小説からは離れていた。 

記事が仕上がって、久々に小説に戻ってきた時に痛感したのだが、「小説は頭が疲れる」。明らかに小説は漫画よりも脳に負荷がかかる

これはそれだけ、小説という媒体が読者に依存しているからと言えるだろう。文字だけで完結してしまうこの媒体は、読者自身の能力に頼らないとその体をなさない。

考えてみれば不思議なものだ。

まったく同じ作品を読んでも、読む人によって「名作」「駄作」と評価が割れてしまう。情報自体は変わらないのだから、読み手の中で変質しているとしか思えない。

付き合い方を誤ると駄作になる

今回のことで思ったのは、小説との距離感の取り方だ。

人間関係でも、人によって得意な距離感や接し方というのがあるだろう。

あれと同じで、その作品ごとに「これは神の視点で書かれているから登場人物の内面がしっかりと書かれているんだな」とか「神の視点だけど内面までは見せないのか」とか「スペースが空いたら、視点が違う人物に変わる作品なのか」とか、読者側が相手(作品自体)との付き合い方を理解しないといけない

どの作品でもいいのだが、「駄作だ」と感じた時はその作品との付き合い方を間違えたのだと思っていいだろう。現にそれを楽しんでいる人がいるのだから。 

物語にとって大事なこと

さてさて、関係のない話ばかりしてきてしまったが、それは私の紹介記事では毎度のことである。どうしても内容のネタバレを避けるとこんな記事になってしまう。

で、『4TEEN』だが、作品との距離感さえ間違えなければ楽しめるはずだ。

この作品に「共感」や「思い出」みたいなのは求めないようにしておこう。もしそういうのが欲しければ、森絵都とかに求めるべきである。

あくまでもこれは「石田衣良」による青春物語であることを忘れないで頂きたい。

大体にしてあの直木賞受賞作である。プロの選考員たちが選んでいるのだから駄作なわけがなかろう…と直木賞受賞作品で泣かされてきた私が言ってみる。

 

ということで、素直に物語を楽しんでもらいと思う。

以上。

4TEEN (新潮文庫)

石田 衣良 新潮社 2005-11-26
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そういえば作者の色を加味するのも読み手には大事なことかもしれんなぁ。