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ベースの神様であるヴィクター・ウッテンの魅力を伝えたいと思う

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どうも。


どのバンドにも欠かせない楽器であるベース。
そして、あまりにも目立たない存在でもあるベース。

私はこのいじらしい楽器と、ベースに人生を捧げている人間ベーシストが大好きだ。

今回はそのベーシストの頂点に君臨する男、Victor Wooten(ヴィクター・ウッテン)の魅力を伝えたいと思う。

◯現役の神様


彼のプロフィールなどはwikiを参照してもらいたい。しかし、これはあまり重要なことではない。
彼のベースを聴くこと、それだけで十分である。まずはこの動画をご覧いただこう。



どうだろうか。この変態的な凄さが分かるだろうか。
興味がない人にはただの演奏に見えるかもしれない。だがこの6分間の演奏の中には、ベースの超絶技巧がこれでもかと詰め込まれている。知識のある人間からすると、これはもう無修正動画レベルに興奮できるシロモノだ。

順を追って説明しよう。

◯開放的な音色


まず弾き始めからしておかしい。
これはベースの音色ではない。
※参考動画

本来はこのように低音でベンベンと鳴るのが普通だ。

それがどうだ。彼の持っている楽器はベースだが、そこから発する音はギターのそれと遜色ない。

バンドの中でベースは低音から中音、ギターは中音から高音を担当している。これによってあらゆる音域をカバーし、表現の幅を広げている。

しかしヴィクターほどの巨匠になると、そんな小さな規格には収まらない。低音楽器でもメロディまで奏でてしまうのだ。

だが、ベースで高音を出すのまでは実はそこまで難しいものではない。抑え方さえ分かっていれば誰でもできると言っても過言ではない。

では何が凄いのかというと、あの開放的な音色なのだ。

自分の声だとイメージがしやすいと思うのだが、高い声を出そうとすると途端に喉が絞まり、鶏が鳴くような声になってしまう。つまり苦しそうな音になるのだ。ベースの弦を短く抑えれば高い音は出る。しかしこれだけ負担のかかっていない音を出すのは容易ではない。というか普通でない。だからこそギターがそこの音域をカバーしているのだ。

ここまで来ると、「だったらギターでいいじゃん」と考えてしまうかもしれないが、それは大きな間違いだ。

速く走れるようになりたいからといって、短距離選手が車に乗ってトラックを走ることはないだろう。それと同じで、ベースという楽器でこの音域、この音色を出すことに価値があるのだ。単純にベースの限界や可能性を追求した結果なのだろう。変態こそがなせる技である

◯伴奏とメロディーが聞こえる

 
楽曲には伴奏とメロディーが存在する。

どちらも曲を構成する大切な要素であるが、ソロパートでは仕方なくメロディーだけを奏でることになる。なぜなら一人で演奏するからだ。
基本的に楽器はひとつの旋律しか奏でることができない。例外はピアノなどの鍵盤楽器だけだろう。

それなのに彼のベース・ソロには伴奏とメロディーの両方が聞こえる。これは一体何なのだろうか?

これを踏まえて次の項目に行きたいと思う。そして次に説明することこそが、この男を神たらしめている要素なのである

◯速弾き?いや、それよりも…


弦楽器の凄さを素人に分からせるために一番手っ取り早いのは速弾きだと思う。派手だし、素人目にも「こりゃあ凄え。あんなに指を動かせるなんてマネできない!」と感じられる。つまり凄さを感じる基準は「マネできない」というものなのだ。

実際、この動画でも速弾きは行なわれている。素晴らしい速度だし、速弾きなのに音のひとつひとつの形がハッキリしている。これをマネするのは容易ではないだろう。しかし、もっとヤバいことがある。

それがタッピングである。

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◯ベースのタッピングは意味が分からない


弦楽器というのは弦を弾くことで音が鳴る。この動画で言えば、0:48ぐらいの所だ。指でやったりピックでやったり人によるが、ベースというのはこうやって音を奏でる。
しかし、この男はタッピングという技術を使って演奏をしている。

1:05ぐらいからベースの首の方で彼が演奏してるのが分かるだろうか。あれがタッピングだ。

弦を弾いて音を出すところを、弦を叩いてベースにぶつけることで音を鳴らしているのだ。
これは本来ギターのテクニックだ。ベースでやるものじゃない。

「いや、ギターもベースも同じ弦楽器なんだから、そんなに変わらないでしょ」
そう思われるかもしれない。それが全然違うのだ。

低音というのは音を発するために非常に大きなエネルギーを使う。高音は簡単に音を発し、遠くまで届けることが出来る。これは周波数の関係によるところなのだが、そのエネルギーを生み出すためには弦を強く弾くこと。これがベースの基本なのだ。

それがどうだ。彼の演奏を見る限りでは、本当に触る(タッピング)だけにしか見えない。あの触る動きの中に、大きなエネルギーを生み出す何かが備わっているからこそあの音量と音色が発生するのだ。正直、私のようにベースを学んだことのない人間には到底説明できないシロモノだし、意味が分からない。

そしてこの技術があるからこそ、上で語ったように「伴奏とメロディーが同時にひとりで演奏できる」のだ。

弦を弾く必要が発生することで、周囲の弦と違う動きをすることが許されないのが弦楽器だ。ベースは弦が太いので余計なのだが、それを触るだけで演奏することを可能にしたことで、メロディーを奏でる弦と伴奏を奏でる弦を分けることができているのだ。

◯聴けば分かるは嘘


私はそこまで耳がいい方ではないし、音楽的なセンスも知識もそこまでない。

だがそれでも彼の演奏が素晴らしいことはすぐに分かるし、私でも分かるようなありえなさがある。

「音楽を理論で語りだしたら終わり」

それも分かるのだが、実は理論を知ることで分かるレベルというのは確かに存在するのだ。特に彼のように究極を地で行く人間は、私たちのような一般人とはかけ離れたレベルの世界でしのぎを削っているので、説明がないと凄さが理解されづらいのだ。

大体にして、ヴィクター・ウッテンの場合、わざわざ同じメロディーをピッキング(普通に弦を弾く)でもタッピングでも弾いて、しかも同じ音色を奏でいるのだ。CDで聴いただけではこの凄さは分からない。



こんなマエストロの演奏を簡単に、しかも無料で聴けるようになったなんて、本当にありがたい時代になったものだ。

地味で目立たないベースだが、このような神もいることを知って、少しでも興味を持っていただけたら幸いだ。


以上。