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打率日本一の作家 伊坂幸太郎のオススメ作品を教える【随時更新】

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よゐこの有野ではない。

※2018年9月17日更新 

 

超高打率作家

どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

 

さて、今回紹介するのは超高打率作家と私が勝手に読んでいる男。伊坂幸太郎である。

出す作品出す作品すべてが高品質。練り上げられまくったプロットに、センスが良すぎる会話劇。まるで良質な映画を見ているかのような感覚にさせるのが伊坂作品の特徴である。

現実感がないとか批判している人がたまにいるけど、そんなに現実感が欲しいんだったら自分の身体でもぶん殴ってろと思う。

伊坂幸太郎は本当に偉い作家である。サービス精神が旺盛なのか、それとも単純に才能の塊なのか知らないが、とにかく作品の打率が高い。つまりハズレが少ない作家なのである。

速筆ではないかもしれないが、これだけの刊行ペースにも関わらず、これだけの質を担保できる作家は非常に珍しい。

 

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オススメ作品を紹介! 

で、今回の記事ではそんな優秀な作家の作品たちを私のような人間が、偉そうにも選抜させてもらうことにした。「お前何様だよ?」という話である。本当に申し訳ない。 

ただ、私だってこれでも伊坂幸太郎のファンを10年以上続けているし、彼の印税にわずかながらにも貢献しているし、何ならこの記事がきっかけでさらに貢献する可能性だってあるのだから、少しくらい勝手なことを書いても構わないだろう、という言い訳を今思いついたのでこうやって並べ立ててみた。見苦しかったらすいません。

ということで、余計な前置きはこのくらいにして、伊坂幸太郎ファン歴10年以上の私がオススメする作品たちを紹介していこう。

 

お楽しみあれ。

 

ラッシュライフ 

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。 

 

伊坂幸太郎の名を世に知らしめた作品で、彼の作品を読むのであれば「まずはこれから」という作品。

デビュー作『オーデュボンの祈り』の時点でだいぶ評価は高かったと思うが、この作品を上梓したことで完全に決定付けた感がある。「こんなの書けちゃうのかよ」って。

ミステリー好きからすると、冒頭のエッシャーの騙し絵を載せている辺りからワクワク感が半端じゃなかった。その時点で名作の匂いを嗅ぎ取ってしまった。そして、この物語の最後を作者が一体どうするつもりなのかも。もちろんそんなことは曲芸以外の何物でもないのは百も承知なので余計に興味が沸いてしまった。

伊坂マジック炸裂の強烈な一発である。

 

砂漠

入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決……。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれを成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。 

 

伊坂幸太郎は基本的にはミステリー作家である。本人自身が「島田荘司に憧れてこの世界に入った」と語っている通り、ミステリー小説を中心に執筆している。そしてそれがクソ面白い。

なのだが、たまにふとした拍子に全然ミステリーが存在しない作品を上梓することがある。

この『砂漠』もそんな伊坂作品の中のひとつである。

ミステリー要素を排除し、それでも高い評価を受けている『砂漠』。この面白さはやはり「さすが伊坂」と思わせるものである。

これこそまさに「上質な映画」を見せられているかのような作品である。大好き。

 

死神の精度

CDショップに入りびたり、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人に触ろうとしない―そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。 

 

この作品の主人公は死神である。何の比喩でもなく、本当に死神である。

死神なのでとってもクール。そして死神なので人間の機微は理解できず、どこかズレた笑いを生み出す。

伊坂作品全てに共通して言えるのだが、とにかく洒落っ気があって面白い。洋画で出てくるような皮肉感のあるセリフがポンポン出てくる。伊坂自身にそういうセンスがあるのだろう。

この作品ではそんな伊坂の「面白いセリフを生み出せる」という能力を最大限に発揮することで、「人外のもの」を生み出すことに成功している。

人間じゃないのに、やたら人間くさい死神とか他の作品で見たことありませんか?それとはまったく違いますから。

 

死神が贈るビターで、ちょっとだけハートフルさを感じる絶妙な物語。

本屋大賞で堂々の3位を獲得したのも納得の出来である。

 

続編はなんと長編。千葉がもっと積極的に物語に絡んで来るので、その辺りは好みが分かれる所かもしれない。

 

チルドレン 

 

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々――。何気ない日常に起こった5つの物語が、1つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。

 

伊坂幸太郎は魅力的な登場人物を創り出すのが上手い。それもとびっきりバカなのに魅力的な人物だ。

『チルドレン』に登場する男、陣内はその代表格である。最初は「何だこいつ?」と思うかもしれないが、次第に「次は何を喋るんだよ、お前は?」と期待してしまう自分に気付くはずだ。

バカが巻き起こすのは一体どんな奇跡か、ぜひ見届けてほしい。

フィクションの世界だからこそ味わえる最高に素敵な物語である。

 

続編も文句なしの出来。

 

 

アイネクライネナハトムジーク

妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL……。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物たちが仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。 

普段から腐るほど小説を読む私だが、そもそも性根が腐っているせいか、恋愛ものにはまったく興味がない。以前に読んだのはたしか『世界の中心で、愛をさけぶ』だっただろうか。もう15年ぐらい前の話である。それで懲りたとも言える。

で、なんでそんな話をしたのかと言うと、そんな私でもこの『アイネクライネナハトムジーク』という恋愛小説は楽しめた、ということである。

あとがきで伊坂は「恋愛ものは書けない」と言及していて、たしかにこんなの普通の恋愛ものじゃないし、それにこんな恋愛ものなんて他の誰にも書けないだろう。唯一無二。

 

短編ひとつひとつを読み終わるたびに、胸の中がちょっと暖かくなるような、幸福感が訪れる。そんな作品集である。良作。 

 

マリアビートル 

幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた、腕利き二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する――。 

 

殺し屋協奏曲とも言うべき、殺し屋だらけの作品。伊坂らしく「どうせフィクションなら思いっきり楽しんじゃいましょうよ?」という感じに仕上がっている。

東北新幹線という密室の中で巻き起こる超特急のストーリーに、一癖も二癖もある登場人物たちの群像劇が最高の興奮を呼ぶ。

伊坂にこういうのを書かせたら右に出る者はいないだろう。

 

一応前作があり、それがこちら。

話が続いているわけではなく、登場人物や設定で重なっている部分が若干ある、というだけ。なのでわざわざ『グラスホッパー』を先に読む必要もないし、それに『マリアビートル』と比べると少々質が落ちてしまうのが否めない。 

 

続編はこちら。殺し屋シリーズ初の短編集である。

最強なのに恐妻家である主人公が微笑ましい。

 

 

 

魔王

会社員の安藤は弟の潤也と2人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、1人の男に近づいていった。5年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。 

 

伊坂作品の中では正直あまり人気がない作品である。しかし、あえてそれを承知で私は『魔王』をオススメしたい。というのも、伊坂自身が「誰も読んだことがない物語を書きたかった」と明言しており、挑戦的な作品であることは間違いないのだ。

私は作家のこういった“挑戦作”が大好きだ。

得意分野を見つけて同じパターンで出し続けるのも確かにいいかもしれない。それを求める読者もいるかもしれない。

しかしながら私は、ひとりの物語好きとして、常に新たな物語を求めている。それが多少歪だったとしても未来の物語の片鱗みたいなものを感じてみたい。

だから既存の面白さに当てはまらなくても全然OK。賛否両論大歓迎。むしろ不人気作品でもぺろりと平らげてやろうじゃないか。

全然中身の説明になっていないかもしれないが、とにかく大好きな作品である。

 

ゴールデンスランバー

衆人環視の中、首相が爆殺された。そして犯人は俺だと報道されている。なぜだ? 何が起こっているんだ? 俺はやっていない――。首相暗殺の濡れ衣をきせられ、巨大な陰謀に包囲された青年・青柳雅春。暴力も辞さぬ追手集団からの、孤独な必死の逃走。行く手に見え隠れする謎の人物達。運命の鍵を握る古い記憶の断片とビートルズのメロディ。スリル炸裂超弩級エンタテインメント巨編。

 

2008年の本屋大賞受賞、山本周五郎賞受賞、このミステリーがすごいでも1位を獲得した文句なしの伊坂幸太郎の代表作だろう。名刺代わりの一発である。映画化もされたし、普段本を読まない人もたくさん手に取られたのではないだろうか。

面白さは折り紙付きとして、この作品が発表された頃はもう伊坂幸太郎が作家として脂が乗りすぎて、逆に手が出せなくなっていた思い出がある。

私だけかもしれないが、絶対に面白いと分かっている作品があると、取っておきたくなってしまうのだ。買いはするけど、ずっと本棚に並べておく。いつか来るであろう「面白い本が見つからないとき」のために取っておきたいのだ。

そうすればいつだって自分の周りに“面白い本”を確保しておくことができる。そんな保険みたいな存在になっていたのだった。

 

結局、『ゴールデンスランバー』も買ってから2,3年は手を付けなかったと思う。

 

またしても作品の説明は一切していないのだが、これだけ評価されている作品なので、わざわざここで紹介する必要もなかったかも。 

 

アヒルと鴨のコインロッカー 

ボブ・ディランはまだ鳴っているんだろうか?

引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は――たった1冊の広辞苑!? そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!

 

伊坂は本当に何をさせても上手いのだが、引用も非常に上手い作家である。どの作品でも何かしらの引用が使われるが『アヒルと鴨のコインロッカー』ではボブ・ディランである。当時はまさかノーベル文学賞を受賞するなんて思いもしなかった。

作中ではボブ・ディランの素晴らしさについてたびたび登場人物が触れるのだが、これがまあ上手い。本当に魅力たっぷりに語ってくれる。私なんてあまりにも感化されてしまって、ボブ・ディランをまだ聴いたことがないくせにファンになってしまったぐらいだ。←アホ 

ちなみにだが、世間一般では『ゴールデンスランバー』が伊坂幸太郎の最高傑作として認知されているようだが、それは間違いである。

伊坂幸太郎の最高傑作は『アヒルと鴨のコインロッカー』一択である。これは動かしようがない事実なのだ。 

世間の評価というのはいつだって少し本質からズレているし、それは仕方のないことだと理解している。一部の濃厚なファンがそれを理解していればいいだけのことである。

濃厚なファンとはもちろん私のことである。

 

バイバイ、ブラックバード

 

小説家は面白い物語を書くのが仕事である。売れるためには仕方がない。

そうなると、少なからず読者の視線を意識し無くてはならない。客観性を失った文章は、ただの自己満足にしかならず、文章本来の目的である「伝える」こと見失う。

ただ、読者におもねるあまり、技工に走りすぎたり、お約束に応えすぎるのもどうかと思う。「またそれかよ」と、読者である私は思ってしまう

まさに伊坂幸太郎はそんな作家で、読者が求めるものをちゃんと理解していて、しかもちゃんと求めているものを提供できる。とっても優秀な作家だ。

 

ではそんな彼が、読者をあまり意識することなく、締切にも縛られず、自分が心地よいと思う物語を紡いだらどうなるだろうか。

 

『バイバイ、ブラックバード』は色んなしがらみから伊坂幸太郎が解き放たれた作品である。

それゆえに彼の良さが存分に発揮されているし、他の作品にはない「自立した物語性」がある。世間への媚びがないのだ。

 

それほどエンタメ性の高い作品ではないが、それでも私はこの作品が大好きだ。

特に小憎らしいあのラストが大好きである。あのシーンに出会えただけでも、読んだ価値があると思う。

『砂漠』を好きな人には超オススメできる作品である。

 

陽気なギャングシリーズ

さあ、これで最後である。最後はシリーズものすべてを一気にオススメしたい。

それがずばり『陽気なギャングシリーズ』である。

嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった……はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ! 奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス! 

 

もうね、このシリーズ大好き

小説の楽しみが全部詰まっている感じ。超面白い。超痛快。超笑える。超騙される。 

こんなバカ丸出しな紹介しかできなくなるぐらい面白い。って、ハードル上げ過ぎか…?

とにかく私のツボにドハマリしてしまっていて、まともに評価することはできないし、するつもりもなかったりする。もう「とにかく読んで」としか言えない。

 

実はこのシリーズの1作目である『陽気なギャングが地球を回す』は、元々『悪党たちが目にしみる』というタイトルでサントリーミステリー大賞の佳作に選ばれたことがある。(そこから全面改訂を行なっている)

その時点ではまだ伊坂幸太郎の評価はそこまで高くなかった。

後日、サントリーミステリー大賞の授賞パーティーに参加した伊坂は担当編集者とパーティー会場の隅でこっそり過ごしていたらしい。なにせ受賞者ではないのだから。

そこへ選考委員である北方謙三が現れ、まだ伊坂に向かって「とにかく書け。何千枚も書け」「踏んづけられても、批判されても書け」と激励してくれたそうなのだ。そのときの言葉があったから作家としてやっていけたんだとか。

まあただの余談だ。『陽気なギャングシリーズ』の中身とは何の関係もない話である。

 

おまけ 

フィクションだからこそ輝くのが伊坂。と言いたい所だが、エッセイも彼のエッセンスが出ていて非常に面白い。さきほど書いたような作品の裏話みたいなのも載っているので、ファンブック的な要素が強いかもしれない。

極度のファンになると、むしろこういう作品の方が堪らなくなってくるから困る。

 

以上。機会があったら更新させていただく。 

 

 

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