俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

未知の極上体験を!!最高のドキュメンタリー映画ベスト20を教える

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ドキュメンタリー映画とは

実際にあったことの記録を中心として虚構を加えずに構成した映画・映像。

つまりカメラに写った映像をそのまま用いた映像記録であるが、作り手の構成と編集というフィルターを通った映像は本当に真実だけなのか。

また、被写体にはどんな思惑があり、そこにはどんな世界が広がっているのか…。

 

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変態に仕事を依頼 

どうも。

私の100人を超える部下の中にとっておきの変態君がいる。

彼は実に年間200本以上のペースで映画を鑑賞するという、本物の「映画の変態」である。

私は彼のような変態の上司であることを誇りに思う。

 

どうしても私たちは、「話題作!」とか「ベスト〇〇」みたいな作品にしか興味を示さない。(まあこの記事もそうなんだけどさ)

宣伝されているもの、みんなが騒いでいるもの、みんなが知っているものだけが良いものだと盲目的に信じ込んでいる。

 

変態というのはあまりにも一般人には理解できない境地にいることから、どうしても忌避されがちだが、実はその道のプロだとも言える。

その分野の本当の魅力や、本当に面白いモノを知ろうと思ったら、やはり変態に聞くのが一番なのだ。

なにせ彼らはその分野に貴重な“人生”という有限の資源を投資しているからだ

ニワカには到底たどり着けない作品たちを数多く知っているはずだ。

 

ということで、そんな本物の「映画の変態」である彼に「最強の映画まとめを作りたいので協力してくれ」とお願いした所、仕上がってきたのが今回の記事になる。

 

…まさかドキュメンタリー映画をまとめてくるとは思わなんだ。

 

一体この記事にどれだけの人の需要があるのかさっぱり見当が付かないが、それでも映画に人生を費やし、映画を誰よりも見てきた人間が選んだ珠玉の作品たちなので、この記事には相当の価値があると私は信じたい

 

面白い映画、未知の楽しみを味わいたい方は必見である。

では行ってみよう。

 

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20位 モッシュピット

監督 岩渕弘樹

 

音楽にムーブメントを起こそうとするバンド「Have a Nice Day!」のヴォーカル浅見北斗に密着。

「Have a Nice Day!」と「NATURE DANGER GANG」二組のバンドとアイドル「おやすみホログラム」の3組によるリリースフリーパーティーを行うまでと、その過程を追う。

一種のカリスマ性を持った浅見に賛同しムーブメントを大きくしようとする協力する周囲の人間や、グループからメンバーの脱退により各々の意識が変わってステージに向かう姿などが映されている。

共に音楽で繋がり、音の波に飲まれ、朝まで踊るような一体感を味わえる映画。

 

19位 劇場版 501

監督 ビーバップみのる

 

『テレクラキャノンボール2013』の大ヒットに貢献したビーバップみのるがメーカー・HMJMから「好きなの1本撮っていいよ」と持ちかけられる。

そこで「有名になりたい」というAV女優を使い3日間の撮影で、伝説に残るAVを撮ろうとする。

しかし女優と監督の熱量の違いから撮影2日目にして女優が辞退してしまう。

そこから監督がどうこの作品を進め決着させるか悩み、企画は枝分かれし、内容は混沌を極める。

断片的な記録映像が続き、取り留めのない内容から監督の頭の中が迷宮入りし、出口が見えない状況が手に取るように分かる。

初回上演後も編集が続き、上映がある度に編集が変わっていくほど、監督は悩み続けている。

 

18位 あんにょん由美香

監督 松江哲明

 

平野勝之の『監督失格』で語られた林由美香を、当時関わった人達にインタビューを行いながら姿を追う。

林由美香が出演した日本未公開の韓国のポルノビデオが発見され、彼女の追悼イベントで上映される。舞台は東京、由美香を除く全員が下手な日本語を喋り全編韓国語字幕。何故彼女はそんな謎のビデオに出演したのか。インタビューを続けていくうちに、彼女がいかに愛されて魅力的な人だったのかが伝わってくる。

「松江くんまだまだだね」と言われた思いを晴らすために作品に魂を込める監督。アダルトなテーマが関わっているが、監督の青春のような爽やかな映画。

予想外にも最後には奇跡とも思えるような結末が。

 

17位 セキ☆ララ

監督 松江哲明

監督も在日三世であることから、アダルト業界に生きる在日二世・三世を追う。元はAVとして発売されたものを劇場用として再編集。

何故AVで在日について語ったのか。監督曰く「セックスがあるから、脱ぐ前と脱いだ後のインタビューが撮れるんだし、セックスを見せる覚悟がある人達だから、故郷や自宅まで付いていける」。その言葉の通り、在日であるということを包み隠さず、在日として日本で生きていくことをまさに“セキララ”に語る。

そして監督自身も在日であったことから被写体と共感し、距離を縮められる。

男優の「在日って中途半端な人が多いんだよ」という言葉。

国籍や流れている血、生まれた場所が様々なだけでちょっと生きにくい人達のアイデンティティを探す。

 

16位 極私的エロス・恋歌1974

監督 原一男

 

セルフドキュメンタリーの原点とも言える原一男の作品。子供を連れて沖縄に移り住んだ元恋人を追い、自力出産するまでを捉えた作品。

子供を育てるのに男の手は借りたくないと突如家を出た美由紀は、沖縄で女性と共同生活をしていた。喧嘩した彼女たちは別れ、美由紀は黒人兵と付き合い、誰の子とも分からない子をアパートで自力出産しようとしていた。返還前の沖縄で一人で生きようとしたり、世の中のあえて厳しい道を選び、だがそれでも強く生きているひとりの女性。

医師や助産師に頼らずアパートの一室での自力出産シーンは緊迫感、必死な状況がひしひしと伝わってきて見ている自分までが手に汗握る。そんな中監督が「一世一代のミス」と語るシーンなども相まってさらに緊張感が増す。画としては最悪だが…。

監督と、元彼女と、後の妻となる音声助手と3人の「極私的」な映像記録であるが、時代を反映してフェミニズムを唱える美由紀は芯が強く、興味を駆り立てる存在である。

 

15位 ドコニモイケナイ

監督 島田隆一

 

2001年の渋谷で自分の居場所を探していた10代20代の若者たちが集まる時代に、東京で夢を叶える佐賀からヒッチハイクで出てきたストリートミュージシャン吉村妃里。夢を叶えようと元気にひたむきに頑張る姿を追い半年間撮影が続いた。

しかしとある日、彼女は統合失調症を発症し緊急入院。強制帰郷となってしまう。その9年後、止まってしまっていた映像に決着を着けるために佐賀まで監督は会いに行く。

会ったときからどこか不安に感じてしまう行動があり、密着を続ける中でも事がうまく進まず表情が曇っていってしまう。強制帰郷となり親族に連れられ空港から旅立つ頃には目から生気が感じられなくなってしまっていた。

9.11と同時期、混沌としていた渋谷を捉えた画質の荒い手持ちカメラ。

その9年後佐賀を訪問したときは画質の上がった据え置きカメラ。

その両方の対比から全く状況が変わってしまったのだと感じさせられる。

一人の夢と挫折とその後を追い、生き方を考えさせられる。

 

14位 ライブテープ

監督 松江哲明

 

ミュージシャンの前野健太が2009年元旦に吉祥寺で行なったゲリラライブを記録したドキュメンタリー。

初詣客で賑わう武蔵野八幡前で突如ギターを掻き鳴らし、商店街を歌いながら通過し、井の頭公園のステージにて演奏するまでを74分ワンカット(!)で収録

元旦のいつもより賑わっているような、閑散としているような、どちらとも言えない独特の雰囲気と、街中の雑踏と、エモーショナルな前野健太の歌が吉祥寺にマッチする。

サングラスを外すシーンや、監督とのやり取りなど、その場面に行き着く空気感が自然な流れに感じられるのも、ワンカットで撮ったからこそである。

どうしてこんなライブをやろうと思ったのか、どうして撮影しようと思ったのか、映画の中で語られる思いは最後の井の頭公園のステージにぶつけられる。

2009年の吉祥寺、当時の日本の空気感、そして前野健太と松江哲明を記録したドキュメンタリー。

 

13位 選挙

監督 想田和弘

 

2005年東京で切手コイン商を営む山さんこと山内和彦はひょんなことから市議会議員の補欠選挙に出馬することとなった。

政治の経験もなく、地元でもない土地で、スーツ姿で頭を下げ続ける姿には日本の選挙活動の不思議さが出ている。

気ままに生きてきた山さんはスーツを一着も持っていなかった。そんな人にも関わらず、出馬を決めてからは党関係者からは何をやっても怒られてばかり。そして多額の費用もすべて自分持ちと、落選すれば借金だけが残る大博打であった。

怒られ頭を下げ、有権者にもお願いの頭を下げ、駆け回る日々。

普通ドキュメンタリーにはテロップやナレーションによる説明が入ることが多いが、この映画には音楽なども一切なく、監督のメッセージを表立って感じさせない「観察映画」という手法を作り出した。

監督のメッセージや視点がないことによって、日本の民主主義における「選挙」というものの構造の不思議さや、滑稽さ、そして山さんの人柄に対しての感想など様々な感じ方ができる。

 

12位 ホームレス理事長

監督 土方宏史

 

とある野球漫画に心打たれ「NPO法人ルーキーズ」という団体を立ち上げた山田豪理事長。様々な理由で高校をドロップアウトした球児を集め、野球と勉強の再挑戦を助け自立を支援する団体。

しかし、思うように球児は集まらずコーチ達になんとか給料を払うも赤字続き。そんな中理事長は資金集めに奔走するも電気水道ガスは止まり、自宅から追い出されホームレスとなる。

金策も尽き、撮影クルーにまで土下座をする山田。しかし「お金を貸すとドキュメンタリーでなくなる」と拒否する監督。撮れてしまったという状況や緊迫感はドキュメンタリー映画の中でも屈指のシーン。

見るからに会話スキルもなければ頭も良くない理事長の言動には不安も感じるが、どこか憎めない、そして行動と理念は誰にも笑うことはできない。

しかし闇金融に借金をしようとして「何が危ないんですか?あの子達の居場所が無くなって、守ってやれなくなることの方が危ないんです」と真顔で語る姿は善意か狂気か。

またなかなか思うように結果を出せずルーキーズでも挫折をしてしまう少年は自傷行為をしてしまう。それを聞いた監督は思わず手が出る。しかしこの監督も過去に体罰で逮捕歴があり、ここが再挑戦の場でもあった。そういった過去を持ちながらも「間違ったことはしていない」と映像を使う許可をした監督にも覚悟を感じるが、地上波で流したテレビ局の覚悟も凄い。

同じ東海テレビ制作の「平成のジレンマ」と教育・体罰というテーマで繋がっている作品。 

 

11位 Fragment

監督 佐々木誠 

 

タレント活動を一時休止した井上実直は。実家のお寺に僧侶として入るその前に9.11後のニューヨークを訪れる。

帰国後「修法師」になる決断をした実直は、死者も出るほど過酷な「日蓮宗100日大荒行」に入行する。

入行前、六本木で仲間たちと飲み、酔っ払いながら女の子に荒行の大変さを語る姿は本当に僧侶になろうとしているのかと疑ってしまう。

荒行を終え晴れて修法師となった実直は、ともに修行した仲間を連れて再度ニューヨーク・グラウンドゼロへと向かう。

9.11事件に直接関係ない東洋人が見たこともない祈りを捧げている姿に感謝をする者もいれば、勘違いする者もいる。

何かを感じ、ただ何かを行動したかった若者の、9.11以降の世界の一つを切り取った断片。

 

真面目で素直な実直はまさに「いいヤツ」だが、少し間抜けで見ていて不安になる姿や、キャラの強いNYへ同行した仲間たち。

大きな事件から身近な世界を映したドキュメンタリー作品だが、登場人物たちには笑わせられる場面も多々。  

 

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10位 ゆきゆきて神軍

監督 原一男

 

己をたった一人の「神軍平等兵」と名乗るアナーキスト奥崎謙三。終戦後にも関わらず「敵前逃亡」の罪で射殺された事件を追い、当時の上官たちの話を伺いに行く。

新年皇居参賀でパチンコ玉を発射し、天皇ポルノビラを撒く、田中角栄殺人予備罪と前科3犯の奥崎。その性格からか上官たちに話を聞いている最中にも激昂し、病人だろうと容赦なく殴り掛かる。

上官たちの生々しい戦争の話にも衝撃だが、己の思想のために全国を駆け回り容赦なく詰めかける姿には圧倒される。

天皇陛下の軍ではなく、奥崎の信じる「神の法」の則って行動する「神軍」。

相手には「警察を呼ぶぞ!」と怒られながらも、自らすでに警察を呼び、その警察官に説教をするなどまさに「キチガイ」と評されてもおかしくない行動を追う。奥崎の行動と戦争の記録としても考えさせられる作品。

マイケル・ムーア監督をして「これまでに見た最高のドキュメンタリー」とまで評価されている映画である。 

9位 童貞。をプロデュース

監督 松江哲明

 

半引きこもり状態の童貞1号は女性とキスの経験すらない23歳。

グラビアのスクラップが趣味で、80年代のアイドルに想いを寄せ自主映画を作ってしまう童貞2号。

そこまで容姿が悪いわけでもなく、服もそれなりに気を使っている彼らだが、趣味や行動などがどこかパッとしない。そんな2人の童貞を救うべく監督はAVの撮影現場に連れて行ったり、デートの約束をこじつけその模様を撮影してこさせたりした。

上手いように転がるときもあれば、そうじゃないときもある。誰しも経験する恋の駆け引きを大人になってから他人にけしかけられてようやく体験する。

屈折した精神とプライドを守り、突き通す姿は笑えて「だからお前は童貞なんだよ」と言いたくなってしまう。

そんな彼らを笑うだけではなく、監督は課題を出すことによって成長させ、大人にさせている。

「仕掛け」をドキュメンタリーとして、男女どちらが見ても笑え、青春を感じられる映画。 

 

8位 監督失格

監督 平野勝之

 

1996年、映画・AV監督の平野勝之は当時不倫関係にあった伝説のAV女優林由美香と共に東京から北海道までの自転車旅行に挑戦。1ヶ月以上かけて礼文島に到着する。

前半の自転車旅行部分は1997年の映画『由美香』の再編集版のようになっている。そこで林由美香、平野勝之という人物、2人の関係性がよく伺える。

その後の2人は別れるも仕事での関係は続いた。

2005年に取材に自宅を訪れるも連絡が取れず、真面目だった由美香を心配し翌日母親を呼び出し部屋に入ると彼女の死体を発見してしまう

彼女の死以降、何も手付かずになってしまった監督は自らの気持ちにけじめを付けるべく、林由美香と膨大な映像と向き合い2人を総括した私的ドキュメンタリーを制作する。

常にカメラを回し続ける作家性から「撮れてしまった」死体の発見シーン。そこにカメラがあったことから事件性を疑われてしまい、映像の使用を止められてしまう。

しかし監督の由美香に対する思いや、由美香の母親の「人間は二度死ぬって言うじゃない?本当に死んだときと、忘れられたときがそうだ」という言葉から、由美香が忘れられないようにと作品にすることを決意する。

由美香に取り憑かれていたのではなく、自分が取り憑いていたと自覚した監督は自分なりのお別れをする。

発見現場を撮れてしまったインパクトと、何もできなくなってしまった監督の苦悩、それを完結させるまでの重さは一見の価値あり。

 

7位 フラッシュバックメモリーズ 3D

監督 松江哲明

 

交通事故の後遺症によって過去の記憶が消え、新しいことを覚えられなくなってしまったディジュリドゥ奏者のGOMA。 

リハビリを行ない、復活しライブを行なうステージに過去の記憶を投影する。

事故と障害といったテーマながらも暗い雰囲気にはならず、ライブをしている姿と重ねてエネルギッシュな作品に仕上がっている。

ステージのスクリーンには、事故のショックから気を紛らわせるために描き続けた絵や、苦悩を吐き続けた直筆の日記、そんな中でも支え続けた妻の日記などが映し出されていた。

「過去」であるスクリーンの映像と、「現在」であるライブをしている姿を3Dの奥行きを用いて階層を持たせ表現していたのは、3D映画の新しい表現手法でもあった。

「神様、この記憶だけは消さないでください」と願うGOMAの生き様を表したドキュメンタリー。

 

6位 平成ジレンマ

監督 斉藤潤一

 

1975年太平洋横断レースにて世界記録を出した世界的ヨットマンでありながら、体罰によって死者を出し1983年に逮捕された「戸塚ヨットスクール」の講師・戸塚宏の現在。

昭和から平成にかけて体罰の禁止のきっかけともなる事件の当事者はどういった考えのもと体罰を行なっていたか。そして事件後復職するも「体罰」が禁止された中で何をどう教えるか。それは現在の教育制度の根本にも繋がる問題である。

戸塚校長には彼なりの筋が通った理論と行動があり、それに同調して教育をともに進める講師もいる。その姿にはとても熱い情熱を感じさせるが、取り憑かれたような怖さも感じる。

そんな事件があったスクールながらも今も子を預けたいと思う親が後を絶たないのは何故なのか。

どの方法が正解か答えの出ない教育現場で、悪とも言い切れない校長の姿には「ジレンマ」を感じる。

今の教育や体罰の意味を中立的に映しながらも、エンドロールに流れる映像には更に心揺さぶられ、考えさせられる。 

 

5位 青春100キロ

監督 平野勝之

 

AV女優という道で数々の1位を獲り「目標がなくなった」と2015年に引退を発表したAV女優・上原亜衣。その引退プロジェクト6作品の中の1本として作られた。

上原亜衣の大ファンだという素人男性「ケイくん」は新宿を出発し、2日間で引退作を撮影している100キロ先の山中湖を目指し、到達した暁には「中出し」させてもらえるというもの。

フルマラソン完走経験のあるケイくんだが、2日間で100キロという数字は未知数であった。しかし、中出しがしたいがためだけにボロボロになりながらも走り続ける。残り10キロとなったあたりから「(会うために)歯を磨きたい」と訴え続ける姿には相当な芯の強さを感じる。

その裏側で引退作を撮影し続けている上原亜衣も、女優人生を振り返り、その2つの物語が交差していく。

「愛されたくてこの仕事を始めたの」「私のことを忘れないで」と語り一つの青春を終えようとする上原亜衣と、ただ憧れの人とヤリたいだけのケイくんのすれ違いも、どちらも清々しいまでの「青春」の姿だった。

引退作を思うように撮影できなかった中で「目を見て想いを伝えてください」と言い続ける彼女に思いは伝わるのか。

 

4位 FAKE

監督 森達也

 

2014年にゴーストライター騒動で話題となった佐村河内守を追ったドキュメンタリー。

騒動の後、自宅にて撮影を行ない素顔に密着するとともに、取材に来るメディアやジャーナリストを映した。

ゴーストライター騒動を解き明かそうとはせず、佐村河内守という人物に寄り添って、ひっそりと自宅で妻と猫と暮らす姿を映す。

テレビや雑誌に出演する新垣隆を見つめる悲しそうな眼差しや、取材に来るメディアの執拗な追求などを見ると佐村河内もある意味被害者のようにも感じられる。

そんな中監督は「(本当に作曲できるなら)曲を作りましょう」と持ちかける。果たして曲を作ることは出来るのか。そしてラストシーンの質問と意味とは。

来客のたびに出てくるケーキや、食事前の豆乳、頬を叩いて演奏するクラシックなど怪しい姿もあれば、手話で通訳をしていた妻を介さずにベランダで2人タバコを吸うシーンにはハラハラしてしまう。

天才作曲家か詐欺師かというような二元論では表せない姿がそこには映る。

 

3位 A

監督 森達也

 

1995年地下鉄サリン事件を起こし日本を震撼させたオウム真理教。中立的な立場を保ちつつ、サリン事件後のオウムとその当時の社会を映す。

主に広報担当の荒木浩に密着し、オウムで生活する人々の日常を映す。その姿はあまりにも「普通」で、本当に凶悪事件を起こすような団体には見えなくなってくる。

そして必然的に失礼な言葉を投げかけ偏った報道をするマスコミや、触れていないのに「転び公妨」で逮捕する警察が悪に見え、「オウム=悪」とする世論は警察とマスコミに操られていたように感じる。

 

しかしこの映画は森達也の視点と、意図によって切り取られた映像であり、彼らが普通の人たちのように見えたところで事件を起こした者たちだという事実は変わらない。

また、彼らの話を聞く中でどうしてオウム真理教が大きくなり、強い信仰を生み出したのかその理由の一端が読み取れるような気がする。

そんな中、道端で会ったおばちゃんからは「社会復帰しなさい。立派な仕事じゃなくてもいいから、普通に仕事をしなさい。あなたは頭良いんだから」と諭される。

「立派」とは「普通」とは何か。自然とこの発言をするおばちゃんがある意味一番怖く見えた。

 

2位 A2

監督 森達也

 

『A』の続編。オウム真理教と宗教団体アレフに密着する。

前作で語られたような切り口と同様に、マスコミでは報道されなかった視点から映す。

信者の住む施設に立ち退きの抗議運動をしていた市民。いがみ合う2組のはずが、家の塀越しに仲良く会話する姿が映し出される。監視小屋の撤去が決まった際も、信者と合意で取り掛かる。また、話し合いをさせてくれと言う右翼団体とそれを受け入れるオウム。その一方でどんな条件を出そうとも一向に退かない警察。

前作と同様に何が悪が何が正義なのか、一体自分は今まで何を見て何を考えてきたのか。頭を揺さぶられる。

信者と同級生の新聞記者との会話には、取材ではなく友人としての会話が見える。皆がこれくらいの温度で付き合えたらいいのに。

「これくらいでいいですかね」とデモを終了させる地域住民。「もう終わっちゃいましたね」と窓から眺める信者。当の本人たちは至って真面目に行なっている行為だが、どこか可笑しく見える。

こんな映画を見なければ素直にテレビや新聞の情報に従ってある意味気楽に生きられたのに…とすら感じてしまえるほど。

人間と人間の関わり方、マスコミや世の中の空気に流される感情を考え直さなければならないと感じられる映画。

 

1位 テレクラキャノンボール2013

監督 カンパニー松尾他

 

ハメ撮りAV監督6人によるロードムービードキュメント。

東京→仙台、仙台→札幌間のバイク・車によるレース、そして仙台、札幌でのナンパやテレクラでの女の子ゲットから、ハメ撮り内容の勝負。

レースの着順やセックスの内容によってボーナスポイントを稼ぎ、競争する。その審査会議は修学旅行の夜のよう。

声をかけられて出演する女性たちの理由や境遇は笑えるものから心配になってしまうものまで様々である。

裸を見られ、時には笑われたりしてしまうのも覚悟の上で顔を出して脱ぐ女性たちは何を思っているのか。

2009年の前回大会と対比してもそれは貧困やSNSが広く浸透した時代を映している。

また監督たちも個性的であり、そのキャラクターだけでも楽しめる存在。

道中での判断が後々のレース結果に響き、「こんなはずじゃなかった…」と悶えている様には共感を覚えてしまった。人生ってやつはいつだってそういうものだ。

 

文句なしに最高で、そして最低なドキュメンタリー映画。

 

劇場版 テレクラキャノンボール2013(ブルーレイ+DVD+ガイドブック入り) [Blu-ray] 

 

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番外編~海外のドキュメンタリー作品~

ここからはおまけとして海外のお勧めドキュメンタリー映画を紹介するのだが、さすが変態くんである。やっぱりここでも誰でも知っているようなマイケル・ムーアの名前は見られないし、『アース』みたいな「撮影時間◯万時間」的な作品は入っていない。

私たちがどれだけ上辺だけしか知らなかったのかを思い知らされる次第である。

では行ってみよう。

 

アクト・オブ・キリング

監督 ジョシュア・オッペンハイマー

 

1960年に行なわれた100万人規模の大量虐殺の実行者であるアンワルは現在でも国民的英雄として暮らしている。その事件の加害者側たちに「映画を撮るので当時の自分を演じてみないか?」と持ちかけ、詳しく当時の話を聞くと同時に過去の行ないを自ら再現していく。

当時の行為を再現する様子はあまりにも楽しそうで、被害者側を演じるときもヘラヘラとしていて、自らの行ないは正しい、それが故に政権を獲り国民的英雄とされているんだという自信を持っている様子だった。

しかし、撮影が進むに連れことの悲惨さを実感し、体が拒否反応を起こし始め、口に出せない後悔や罪の意識を感じているようであった。そんな人も子どもが乱雑に動物を扱っているとダメだと注意する。その心境が分からない。

虐殺や政治的大量殺人など、歴史で繰り返されていることではあるが、加害者が行なった行為を反省し始める姿はこの映画の光にも見える。そして直接的に手は出していないが協力させられた者など、自分もどれかになりうる可能性があると思うと他人事として見れない。

 

イクジット・スルー・ザ・ギフトショップ

監督 バンクシー 

 

決して素顔を明かさないストリートアーティスト・バンクシーの初監督作品。

社会現象のように毎夜アーティストが表れては作品を路上に残していた頃、店を経営する傍ら趣味で映像を撮り続けていたグエッタはストリートアーティストのドキュメンタリー作品を作ろうとする。その中で一際有名だったバンクシーに幸運ながらも接触できたグエッタだが、バンクシーは映像の才能がないと感じる。そしてバンクシーはカメラと映像を奪い、グエッタを「Mr.ブレインウォッシュ」としてストリートアーティストに仕立て上げる。

その成り行きを見ていると、ブレインウォッシュには本当に才能があるようには感じられないが、いきなり個展を大きなホールで開催して大盛況となる様子は「アート」というものに疑問を投げかける内容でもある。

そして素性の分からないバンクシーの作品でもあるこの映画の主人公ブレインウォッシュすらもある意味バンクシーの作品のようにも感じられる。

とすると、もしかしたらこの映画すべてがバンクシーの作品でドキュメンタリーではないのではと感じてしまう。

監督に揺さぶられ、転がされ、突き放されてしまうような映画。

 

カルテルランド

監督 マシュー・ハイネマン 

 

近年メキシコでは「メキシコ麻薬戦争」と呼ばれる警察・麻薬カルテル・自警団の勢力争いが続いている。

麻薬カルテルに親戚を殺されたりなどして自ら立ち上がる自警団は段々と勢力を拡大して、地域を取り戻していく。

そんな自警団に感謝する者もいれば、カルテルに繋がりのあった者たちは居場所を追いやられる。

自分のために闘い始めた自警団も傍から見ればカルテルとさほど変わりないのかもしれない。

また、警察からしても違法行為で戦うことを見逃すわけにはいかず、組織を解体しようとする。大きくなりすぎた自警団は警察官からしても厄介な存在だったのである。

改めて何が正義なのか分からなくなる。

現実でそんな状況が陸続きであるということが、メキシコ国境に巨大な壁を作ろうとしたトランプが支持された理由の一端だというのもよく分かる。

麻薬カルテルを題材にした映画が増える中、脚本なんかなく本人たちの意志で行なわれている現実だと思ってみると目を背けたくなるほど信じられない現実である。

 

ルック・オブ・サイレンス

監督 ジョシュア・オッペンハイマー 

 

『アクト・オブ・キリング』の続編的位置づけ作品。前作で扱った虐殺事件を被害者側から映す。

兄を殺した加害者に会いたいと詰め寄る主人公。加害者たちは話しかけてくるメガネ技師がまさか自分が殺した人の親族だとは思わず、英雄のように自分を語る。しかし、真相を告げられるとしどろもどろになったり逆ギレしたりと反応は様々。

謝罪が欲しいのか?金が欲しいのか?と聞かれるも、何かが欲しいのではない。彼は残された親族の苦しみを分かって欲しいだけだったのだ。

しかし、現政権を取っているため、首謀者たちも役人になっていたりする。母からは自分のためにも子供のためにも蒸し返すような話は止めろと言われてしまう。悪いことをしてるわけでもないのに孤立していく。

インドネシアの虐殺だけではなく、世界各地で起こる戦争や抗争など、どの話でも当てはまるような状況に、加害者と被害者の関係はどうあるべきなかを考えさせられる。 

 

最後の一本 ペニス博物館の珍コレクション

監督 ジョナ・ベッカー/ザック・マス 

 

ペニスが好きで好きで仕方ないアイスランド人が40年に渡って収集した哺乳類のペニスを展示した世界で唯一のペニス博物館がある。そこの館長は死ぬ寸前に叶えたい夢があった。それは人間のペニスを展示すること。そこに2人の候補者が現れる。

候補者の1人は300人と関係を持ったというプレイボーイ。もう1人は自分のペニスを「エルモ」と呼ぶ中年カウボーイ。

ペニスを集めて博物館を作ってしまう情熱に驚きだが、それ以上に自分のペニスを展示しろと主張し合う2人の男のキャラが強烈で面白い。

キャラと自己主張の強さが故に、後半からはどうしても自分のペニスを見せたい中年カウボーイのおかしな姿を映す映画になっている。  

 

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未知の世界に触れるということ 

以上で今回の記事で紹介する作品は終わりとなる。

こうして見てみると、どれもこれも強烈な作品ばかりで、鑑賞の際にはかなりの覚悟が必要そうである。

ドキュメンタリーというのは、自分以外の誰からの視点でその世界に触れることに他ならない。 

テレビやネットで得た情報でさも「自分は物知り」だと勘違いしている現代人は多いことだろう。そんな脳みそがカチカチになっている人たちにこそ、この珠玉の作品たちを体験し、脳みそをウォッシュしてもらいたいものである。

 

さて、私はどの作品から取り掛かろうか。

価値観を揺さぶられる予感にワクワクしている。

 

以上。

 

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変態君の2016年ベスト映画のまとめはこちら→年間150本ペースで映画を観る変態が選んだ2016年最高の8本!!