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帯よ、余計な仕事をするでない。『イノセント・デイズ』

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皆様に質問です

どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

こんなブログを見ているということは、きっとあなたも私と同じで小説が好きなのだろう。

そこで、そんな皆様にひとつ質問がある。

 

「面白い小説をどうやって探していますか?」

 

それぞれ自分なりの面白い小説の探し方があると思う。たくさんの方法があるだろう。

しかしながら、きっと大多数の人が参考にしているであろうものがある。それによってみんなが面白い小説を見つけているのだ。

 

それがだ。

 

本屋の新刊に巻かれた帯。扇情的で蠱惑的な言葉を身にまとい、世の本好きを魅了して止まない帯。あいつは人を狂わす。読書好きの選球眼ならぬ選本眼を曇らせる魔力を持っている。

 

はっきり言おう。あれは悪魔だ。

これまでにも私は帯の魔力によって、数々の悲劇を体験してきた。無駄な金と時間を本の悪魔に捧げてきた。

 

※参考記事

www.orehero.net

 

そしてまた、私は愚かにも同じ過ちを繰り返す…。

 

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地雷本?

さて、本題に入ろう。今回も小説の紹介である。

それがこちら。

 

田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は……筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。 

 

思わぶりな入りだったので、きっとここまで読んだ方はこの『イノセント・デイズ』を地雷本だと思っているかもしれない。だが安心してほしい。それは違う。ただ単に私が勝手にすっ転んで骨折しただけなのだ。

 

『イノセント・デイズ』は人気が出てもそこまでおかしくない作品だと思う。絶賛、とまでは行かないだろうが、私のこれまでの読書経験から言えば、「ハマる人にはドハマリする」系の作品である。

そう、つまり読み方さえ間違えなければ素直に楽しめる作品なのだ。そして残念なことに私は読み方を間違えてしまったわけだ。

 

踊り狂う悪魔

では、なぜ私が読み方を間違えたのかと言えば、話は最初に戻る。

帯である。

あの悪魔がまたしても私に微笑みかけたのだ。その微笑に誘われ、私は自滅した。あの悪魔めっ…!

 

ちなみに今現在、『イノセント・デイズ』は書店でこんな感じになっている。

 

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“衝撃” “大傑作ミステリ” “第68回日本推理作家協会賞受賞”

などなど、悪魔たちの笑い声が皆様にも聞こえるだろうか。

 

こうやって時間が経って冷静に見てみると、どの文句も今まで私が散々騙されてきた言葉ばかりだ。『ピース』とか『ガダラの豚』とかで…。 それでも騙されちゃうんだから、アホとしか言いようがない。ある意味幸せな奴だ。

 

繰り返すが、決して『イノセント・デイズ』は駄作ではない。地雷でもない。

帯や、上の画像のようなポップで躍る謳い文句に惑わされなければ大丈夫だ。もっと言えば、帯やポップを無視すれば、ちゃんと楽しめる作品だ。 

 

本を勧めることの難しさ

この現象を見てつくつぐ思う。「本を勧めることは難しい…」と。

面白い本を勧めたかったら「これ面白いから読んで」で済む。いや、実は済まない。みんなそんなに素直じゃない。もっと具体的な情報を求めている。食指が動くような“何か”を求めている。だから出版業界は悪魔を躍らせることになる。みんなが好きなフレーズを撒き散らす。そして言葉は暴走する…。私は踊り狂う。

 

私もこうやって日々、面白い本を紹介し続けていて、その作品数は優に500冊を超える。月間の売上は100万円ちょうどぐらい。

その経験から言っても本の面白さを未読の方に伝えることは「難しい」と言わざるをえない。 それだけ売りさばいているにも関わらずにだ。

 

大体にして自分がそうなのだが、あらすじで内容を知ってしまった時点でその本の面白さは何割か失われてしまう。あらすじでさえそうなのだから、解説などされようものなら、作品は死んだも同然。解説を読んだ後の読書は、死体を舐め回すような作業になるだろう。全然例えになっていないが、それくらいキツイ作業になるということだ。つまり、読む気が無くなる。

しかし、繰り返すがそれでも“読むキッカケ”は欲しい。食指が動かせる何か。そんなフックがなければ人は動かない。動かせない。

悲しいけれどこれが事実だ。

 

それでも“衝撃”は違うだろ

とまあグダグダ愚痴みたいなことを書き連ねてきたが、それでもひとつ確実に言えることがある。

『イノセント・デイズ』を“衝撃”なんて触れ込みで紹介するのは、絶対に違うだろ。

 

そんな立ち上がりの早いインパクトを持った作品ではないだろう。“衝撃”というのは、車に轢かれるような、あのイメージだ。

それは強烈なミステリーとかに相応しい言葉であって(それでもネタバレに近いから書いてほしくないが…)、『イノセント・デイズ』のような重みがあって、息をするのが苦しくなるような作品には必要ない言葉だ。

あのポップを書いた人は本当に読んだのだろうか。

人によって読んだ感想は違って当たり前だけれど、それにしても酷いだろう。いや、読んだことを前提に語っているけど、とてもそうは思えない。

 

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じゃあどうすればいいか?

私の職場でもよくいる。文句は言うクセに自分では何も考えない奴が。考えはしても手は動かさない奴もいる。手は動かしても責任は取らない奴もいる。私の周りはロクな人間がいないようだ。きっと私も含めて。

いや、話が逸れた。いや逸れていないか?

先程から私は偉そうに本屋のポップに好き勝手文句を言っていたのだが、文章を書きながら己の内なる声が聞こえてきた。

「じゃあどうすりゃいいんだよ?そんな偉そうなこと言うんだから、それなりのアイデアがあるんだろうな?誰もがついつい手が伸びてしまうような殺し文句が」

恐ろしくて仕方ない。なんてこと言い出すんだ。こいつは、って私か。

 

ハードルを上げておいて申し訳ないが、そんな便利な殺し文句があるのであれば、とっくに使っているし、わざわざこんな駄文を書き連ねてもいない。ここまで書くのにどれだけ時間を消費していると思っているんだ。

 

まあ言い訳はこれぐらいにして、私が素直に『イノセント・デイズ』を勧めるならば、以下の点を伝えるようにするだろう。世の書店員さんは参考にしてもらいたい。←何様?

 

・読んでいる最中に感じる独特の重さ

・決して心地よい物語ではない

・誰かを助けることの難しさ

・救われることとは?

 

こんなところだろうか。

『イノセント・デイズ』は非常に重い物語であり、決して万人受けするようなものではない。つまり、王道のストーリーではないのだ。であれば、そのマイナーさを押すようなコメントでないと、不誠実だと私は思う。勘違いする人が出てきてしまうだろう。

まあ、勘違いと理解のどこが違うんだ、なんて問題もあるから難しいところではあるけれども…。

 

それでも『イノセント・デイズ』に付いている帯が、あまりにも余計な仕事をしているのは間違いない。ケーキに醤油をぶっかけているようなもんだ、あれは。

 

煽りもいいけど、もっと作品に寄り添うような帯が欲しいもんである。最近の帯はうるさすぎる。と、いち読書好きとして私は思う。

 

以上。

 

 

どうでもいいのだが、作品名で検索をかけると絶対にBLが引っかかってくるのが気になる。

 

 

 

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