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映画『この世界の片隅に』のこだわりがヤバイ。片隅に追いやっている場合ではない

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※こちらの記事は寄稿になります。

 

私の職場の部下である、「年間200本以上の映画を鑑賞する」という変態くんの手による映画レビューになる。

この世には腐るほど映画があり、その中から本当に面白い作品を見つけようとすると、膨大な時間がかかってしまう。そんなときに役立つのが変態の存在である。

貴重な人生の時間を映画に捧げる彼らは、さながら映画というジャングルを掻き分ける冒険家である。私たちは彼らが見つけてくれた“秘宝”を楽しむだけでいいのだ。

 

今回紹介する映画はこちら。

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『この世界の片隅に』である。2016年は『シンゴジラ』や『君の名は。』が大ヒットした年だったが、実はこの作品が最強との呼び声が高い。

 

では変態くんのレビューに行ってみよう。

 

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~寄稿ここから~

作品概要

第2次大戦下の日本。広島に住む主人公“すず”は辛い時代の中も日々の生活に小さな幸せを見出して生活していた。そして彼女は呉に嫁ぐこととなり、昭和20年8月6日を迎える。

 

すずを演じるのは『のん』こと能年玲奈であり、自然な広島弁と柔らかい雰囲気とおっちょこちょいな印象は他の人では考えられないほどマッチしている。

子供時代を過ごした広島市内には今は原爆ドームとなった当時の広島産業奨励館が存在し、その周囲には街が広がり生活が存在していた。戦争というものが昔の話でどこか現実的に感じられない自分にとってもその生活の様子は戦争の被害が広がる前の広島にタイムスリップさせてくれる。

“すず”がとにかくほっこりさせる

嫁いだ先の呉で、変わらず幸せに過ごそうとするすず。戦争中の限られた物資の中で工夫しながら料理をしている姿はとても幸せそうで、彼女の人柄をよく表している。そして大人になっても抜けないおっちょこちょいで周囲の人々を笑顔にさせている。それは本当に戦争をテーマにしているのか忘れてしまうほどほっこりした場面だ。

戦争を「悪いこと」と表現するのではなく、当時はそういったことを感じながらも国を信じ協力しなければならない状況を描いている。敗戦後、悔しさを爆発させるすずの姿はとても見ていられないぐらい痛ましい。

イカれた再現性

当時の風景を再現するために数々の取材の下、当時の広島に存在していた街の様子だけでなく、遊郭の人々や呉に入港している戦艦も忠実に描いている。それだけでなく、残る軍の記録から戦艦の乗組人数や被害状況、天気や空襲の時間までリアルに再現されている。

また戦闘機のプロペラや爆弾の音までも忠実に再現され、本当に戦争に巻き込まれてしまったような感覚になり、防空壕へ避難した時は本当に恐怖を感じた。この秀逸な音響は映画館でこそ体感すべきものだと思う。

 

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でも「笑える」作品

辛く泣ける場面がある「戦争映画」であることは間違いないのだが、全編を通して「笑える」楽しい作品になっている。

そして、姉のアザ、民家の天井板、遊郭の女性に渡す絵、すずの描く風景がと歪んだ世界、焼夷弾など多くは説明されないがその一つ一つに大きな意味があり、何度見ても新しい発見がある映画になっている。

話題作ではなかった

細部まで作り込まれリアルな戦争映画として評価は高かったものの、メディアなどではあまり取り上げられていない。

クラウドファンディングで作られ小さな規模で始まったこの映画は口コミで評判が広がり、2016-2017の年末年始で公開館数が増える予定になっている。

この機会にぜひ映画館で見て頂きたい作品である。

フード理論

余談にはなるのだが、食事風景がたくさん登場するこの映画において「フード理論」を知って見るとより理解が深まるのではないかと思う。

こちらの書籍に記されているのだが、

ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50

福田里香 太田出版 2012-04-12
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by ヨメレバ

「フード理論」というのはこの映画だけではなく、様々なドラマ、CMなどにも応用される理論である。

一読いただくと作品中の「食」から人や物事の関係性がよく見えてくる良書です。

 

~寄稿ここまで~ 

 

こんな記事を書いているそばからYahooのトップニュースで『この世界の片隅に』が取り上げられていた。

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こうなるとこれから人気は一気に加速するだろう。私はまだ『この世界の片隅に』を未見なのだが、どれだけヒットするか楽しみである。

それにしても個人的には映画よりも「フード理論」の方がかなり興味がある。言われてみれば物語に出て来る悪役は皆食卓を破壊してくる印象がある。食べ方が汚かったりとか。

変態くんにはこれからも面白い映画を紹介し続けてもらおうと思っている。ご期待いただきたい。

 

以上。